(※写真はイメージです/PIXTA)

※本連載は、松本洋氏の著書『マンションの老いるショック!』(日本橋出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

管理費滞納がある管理組合は15.2%に上る

■管理会社の業務の範囲

 

平成30年度マンション総合調査のデータでは全体では、滞納(6ヶ月以上)住戸がある管理組合は15.2%である。滞納住戸割合は「1%超2%以下」 が5.3%と最も多く、次いで「1%以下」が5.0%となっています。

 

完成年次別では、完成年次が古くなるほど滞納(6ヶ月以上)住戸がある管理組合の割合が高くなる傾向にあります。

 

一般的に、管理費等の滞納が発生した場合、事務管理業務を管理会社に委託している管理組合では、前月における会計の収支状況に関する報告を管理会社は書面で行いますので管理費等の滞納状況を明確に把握しておくことが理事会としては必要です。そして管理会社を通じて、書面や電話・訪問などにより支払いが遅れている旨を知らせて督促することになります。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
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また、弁護士法第72条の規定を踏まえて、債権回収はあくまでも管理組合が行うことが基本であることに留意しつつ、マンション管理会社と事前に協議が整っている場合には、管理会社名義の配達証明付内容証明郵便による督促等について管理会社に委託することも可能です。

 

管理会社は、管理費等の督促結果を管理組合に督促状況と合わせて書面で報告することになっています。管理会社からの報告で回収できない旨の報告があれば、管理組合理事会の役員が督促を行うことになります。訪問の場合は、複数の役員で行動するとともに、滞納や支払いについての支払計画書や滞納していることの承認書を提出してもらい時効を中断しておくことが大切です。

 

それでも回収できないときには、理事会決議で未納の管理費等請求に関する訴訟その他法的措置を追行します。

 

また、管理会社は、管理事務を行うため必要なときは、管理組合の組合員及びその所有する専有部分の占有者に対し管理組合に代わって行為の中止を求めることができる旨が管理委託契約にうたわれています。共同生活秩序を乱す行為や建物の保存等の有害行為を行うものに管理委託契約に基づき中止を求めても組合員などがその行為を中止しないときは、管理会社はその責を免れるものとし、その後の中止などの要求は管理組合が行うものと規定されています。

 

このように、管理委託契約書においては、管理費等の督促業務、組合員等の有害行為の中止要求は、管理会社は初期対応を行うものの、一定の効果が得られないときには、管理会社は免責されることになっています。

 

その後は、引き続いて管理組合が行うことになります。

 

また、上下階など騒音トラブルのような、居住者間のトラブルについては原則、当事者間で解決するのが一般的なルールです。管理組合や管理会社は仲裁や和解を勧めません。

(注)弁護士法第72条の規定
(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)

 

弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。

 

■小規模マンションの管理委託

 

管理組合がソフト・ハード両面にわたる管理業務を行うに当たっては、自主管理・一部委託管理・一括委託管理の3つの方法があります。それぞれ長所、短所がありこの中で管理組合として最も合理的かつ経済的で信頼のできる管理方式を選択することになります。

 

管理を管理会社に委託していないいわゆる自主管理のマンション管理組合では、管理会社に委託する方式に比べて割安になります。半面、マンション内の個人的トラブルの解決について心理的、時間的な苦痛が伴うことや組合員個人の労力及び時間がかなりの負担になることから、自主管理方式のマンションは最近は減少傾向になっています。

 

一部委託方式というのは、自主管理法式の一種といわれていますが、会計等事務管理業務のみを専門業者に委託する方式です。専門業者に委託した分労力と時間の負担は軽減できますが、費用の負担が増加します。また、委託業務の選択及び委託業務の管理監督などの業務が増加します。

 

管理会社によっては、こういった一部委託方式の契約でも引き受けてくれるところも最近は増えているようです。一括管理方式は、ほとんどのマンション管理組合が採用している、管理業者に委託契約に従ってほとんどの業務を任せる方式です。

 

管理会社の専門的知識や客観的なアドバイザーとしてのマネジメントを受けることができます。しかし、自主管理に比べると費用が割高になります。

 

国土交通省の平成30年度マンション総合調査によれば、マンショントラブルの処理方法として「管理組合内で話し合った」が58.9%と最も多く、次いで「マンション管理業者に相談した」が46.5%、「当事者間で話し合った」が19.4%となっています。

 

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マンションの老いるショック!データから学ぶ管理組合運営

マンションの老いるショック!データから学ぶ管理組合運営

松本 洋

日本橋出版

分譲マンションは現在、「区分所有者の老い」「建物設備の老い」という二つの老いの問題を抱えています。 本書では、国土交通省から公表されているデータや、筆者のマンション管理士としての経験から得た知識を基に「マンシ…

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