口座数が300万を突破した「つみたてNISA(積立NISA)」。メリットばかりが強調されがちですが、デメリットも知っておかないと、後悔しかねません。証券会社出身のSGO編集者がわかりやすく解説します。
つみたてNISA(積立NISA)のメリットと意外なデメリットを徹底解説 (※写真はイメージです/PIXTA)

個人の資産形成を後押しするために、金融庁主導で2018年に始まった「つみたてNISA(ニーサ)」。

 

投資の利益にかかる税金がゼロになる優れた制度で、メリットばかりが強調されがちですが、デメリットも知っておかないと、「こんなはずじゃなかった…」と後悔しかねません。

 

そこで本記事では、つみたてNISAのメリット・デメリットを中心に、制度の特徴を整理してお伝えします。

 

つみたてNISAを始めようか迷っている人、制度をよく理解してから始めたい人、これから資産形成を考えている人は、ぜひ参考にしてください。

 

なお、NISA(少額投資非課税制度)には「一般NISA」と「つみたてNISA」の2種類があります。違いは『「つみたてNISA(積立NISA)」と「一般NISA」の違い…選ぶなら?』で解説しているので、概要を把握してから読み進めると、本記事の内容が理解しやすくなります。

 

〈目次〉

1.「つみたてNISA」で押さえておきたいポイント3つ

2. つみたてNISAのメリット5つ

3. つみたてNISAのデメリット5つ

4. まとめ

1.「つみたてNISA」で押さえておきたいポイント3つ

積立NISAのポイント
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

つみたてNISAを始める前に押さえておきたいポイントは、次の3つです。

 

■つみたてNISAで押さえておきたいポイント3つ

  1. 年40万円までの積立投資で得た利益が最大20年間非課税になる
  2. 2037年までに投資した分が非課税になる
  3. 法改正後は2023年までに始めれば、20年間で800万円の非課税枠をフル活用できる

 

それぞれ解説します。

 

1.1.「年40万円」までの積立投資で得た利益が「最大20年間」非課税になる

つみたてNISAは、少額による「長期・積立・分散投資」を支援するための非課税制度です。

 

毎年40万円までの積立投資が可能で、最大20年間、合計800万円までの投資で得た利益と、投資信託から出る分配金が非課税になります。

 

「20年も先のことなので、どれくらい増えるかイメージできない」という方もいると思いますので、シミュレーションツールで試算してみましょう。

 

毎月3.3万円を20年間積立NISAで運用した場合のシミュレーション
毎月3.3万円を20年間つみたてNISAで運用した場合のシミュレーション (出所:金融庁「資産運用シミュレーション」

 

すると、毎月33,000円(年間396,000円)を20年間つみたてNISAで運用し、想定利回りを3.0%(年率)とした場合、元本792万円が1,083.4万円に増え、運用利益は291.4万円になります。

 

ちなみに、利回り5.0%で運用できた場合は、運用利益は564.4万円、積立金額は1,356.4万円まで増え、元本は約1.7倍になる計算です。

 

通常の取引であれば、利益に対して約20%の税金がかかりますが、つみたてNISAなら非課税になり、利益がそのまま残ります。

 

1.2.「2037年まで」に投資した分が非課税になる

つみたてNISAは、次の図のように、たとえば2018年に40万円積み立てた分は、2037年の12月末までに利益が出た状態で売却すれば非課税になります。

 

そして、2019年に積み立てた分は2038年まで非課税になるといったように、非課税期間が1年ずつズレていくのが特徴です。

 

積立NISAの仕組み
(出所:金融庁「つみたてNISAの概要」

 

ここで注意したいのが、現在、非課税になるのは2037年に投資した分までということです。つまり、2037年からつみたてNISAを始めれば、投資できるには最大40万円だけとなります。

 

また、2022年から始めても、2037年までの16年間で最大640万円しか非課税の恩恵を受けられません。

 

1.3. 法改正後は「2023年まで」に始めれば、20年間で800万円の非課税枠をフル活用できる

しかし、2022年からつみたてNISAの投資可能期間が5年間延長されることが決まっており、2042年に投資した分までが非課税になります。

 

そのため、2022年からつみたてNISAを始めれば、変則的に最長2042年までの21年間、最大820万円の非課税枠になります。

 

そして、2023年までにつみたてNISAを始めれば、2042年までの20年間、非課税枠800万円をフル活用できます。

 

2. つみたてNISAのメリット5つ

積立nisaのメリット
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

次に、つみたてNISAの税制優遇以外のメリットを5つ見ていきましょう。

 

■つみたてNISAのメリット5つ

  1. 自分で投資対象を選ぶ手間が少ない
  2. 月100円の少額から始められる
  3. 簡単に分散投資ができる
  4. 買うタイミングを考えなくてよい
  5. 売却していつでも資金が引き出せる

 

それぞれ解説します。

 

2.1. 自分で投資対象を選ぶ手間が少ない

日本の株式市場には3,700銘柄以上が上場しており、投資信託は6,000本以上が販売されています。合わせて約1万の投資商品のなかから自分に合った商品を探すのは、至難の業です。

 

しかし、つみたてNISAで購入できる商品は、金融庁の基準を満たした215本の投資信託とETFに限定されているので、投資対象を選ぶ手間が最小限で済みます。

 

基準は、販売手数が無料(ノーロード)であったり、信託報酬(投資信託の手数料のこと)が一定の基準以下だったりと、低コストの商品ばかりです(具体的な商品は金融庁のサイトを参照)。

 

しかも、日経平均などの株価指数に連動するように設計された手数料が安いインデックスファンドが多数用意されています。そのため、つみたてNISAを利用すれば、最小限の手間で低コストで資産運用を始められます。

 

2.2. 月100円の少額から始められる

つみたてNISAの最低積立投資額は金融機関によって異なり、SBI証券楽天証券松井証券マネックス証券などの主要ネット証券では、月100円の少額から始められます。

 

そのため、つみたてNISAは、少額から始めたい人や、投資に回すお金が少ない人などに特におすすめの制度です。

 

2.3. 簡単に分散投資ができる

卵は1つのかごに盛るなのイメージ図
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

『卵は1つのかごに盛るな』という投資格言があるように、投資は1つの銘柄に集中させるのではなく、複数の金融商品を買って値下がりリスクを分散することが大切だとされています。

 

つみたてNISAは投資信託(投資家から集めた資金を専門家が国内外の株式や債券などで運用する金融商品)での運用が中心になるので、最初から分散投資ができる仕組みになっています。

 

たとえば、「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」という人気のインデックスファンドを見てみましょう。

 

このファンドは、米国の代表的な株価指数S&P500に連動するように設計された投資信託で、これ1本を1万円購入するだけで、次のような世界的に有名な大企業に分散投資できます(組入比率は、同ファンドの2022年1月26日交付の目論見書を参照)。

 

■「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」を1万円購入した場合の上位5銘柄

  • マイクロソフト(600円)
  • アップル(590円)
  • アマゾン(370円)
  • アルファベット(グーグルの持株会社:220円)
  • テスラ(220円)

 

500銘柄すべてを買うには、まとまったお金が必要です。

 

しかし、つみたてNISAなら、少額で有名企業の株式を少しずつ保有することができ、投資初心者でも簡単に分散投資ができます。

 

2.4. 買うタイミングを考えなくてよい

つみたてNISAは、最初に積立設定する銘柄を選んで投資比率などを設定すれば、ドルコスト平均法で決まった日に一定金額を自動でコツコツ買い付けてくれます。そのため、投資の手間がほとんどかかりません。

 

しかも、株価チャートを見て売買タイミングを図ったり、会社四季報を読んで企業分析したり、難しい投資の知識が必要ないので、その時間を余暇にあてることができます。

 

ちなみに、つみたてNISAの購入頻度は金融機関によって異なり、

 

  • 月に1回
  • 週に1回
  • 毎日

 

などから選べます。月に1回のみの金融機関がほとんどですが、SBI証券のみ「毎月・毎週・毎日」の3種類のなかから選ぶことができます。

 

 

2.5. 売却していつでも資金が引き出せる

資産形成の手段として、「つみたてNISA」と「iDeCo(個人型確定拠出年金)」がよく比較されます。

 

iDeCoは年金なので原則60歳まで引き出せませんが、つみたてNISAは非課税投資期間の20年が経っていなくても引き出せます。

 

たとえば、転職するにあたって当面の生活費が急に必要になったり、結婚資金が必要になったり、マイホーム購入のための頭金を用意する必要があったりしても、つみたてNISAなら売却して現金化することができます。

 

 

しかし、次の金融庁の資料でも示されているように、積立投資は10年や20年といった長期で運用することで収益率が安定して高くなるとされています。

 

国内外の株式・債券に分散投資した場合の収益率の分布
(出所金融庁「つみたてNISAについて」平成29年7月)

 

そのため、近い将来まとまったお金を使うことがわかっている場合は別の口座で貯めておき、つみたてNISAでは10年以上保有つもりで始めるようにしましょう。

 

3. つみたてNISAのデメリット5つ

積立NISAのデメリット5つ
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

メリットが多いつみたてNISAですが、デメリットもあります。基本的な項目から意外な項目まで5つ紹介するので、しっかり把握しておきましょう。

 

■つみたてNISAのデメリット5つ

  1. 投資できる商品が限定されている
  2. 非課税投資枠が年間40万円で、一般NISAより少ない
  3. 商品の入れ替えができない
  4. 損益通算と繰越控除ができない
  5. 非課税期間終了時に含み損の場合は取得価格が下がる

 

それぞれ解説します。

 

3.1. 投資できる商品が限定されている

繰り返しになりますが、つみたてNISAの対象商品は、金融庁お墨付きの投資信託とETFに限られます。そのため、個別株式やREIT(不動産投資信託)、つみたてNISAの対象外の投資信託、米国株式などは購入できません。

 

しかし、つみたてNISAは最初から低コストの商品に絞られているので、初心者は高いコストを支払わずに済みます。そのため、投資対象が少ないことは逆にメリットとも言えます。

 

自分で銘柄を選び、自分の相場観で株式投資がしたい方は、一般NISA口座や通常の総合口座(もしくは一般口座)で取引しましょう。

 

3.2. 非課税投資枠が年間40万円で、一般NISAより少ない

つみたてNISAの非課税額は年間40万円で、一般NISAの年間120万円と比べて少ないです。しかし、つみたてNISAの非課税期間は20年間なので最大800万円投資でき、一般NISAの最大600万円(=120万円×5年間)と比べると200万円多いです。

 

つみたてNISAと一般NISAは併用できないので、「目的」に応じてどちらのNISA制度を利用するかを決める必要があります。

 

たとえば、次のような目安が考えられます。

 

  • つみたてNISA:長期でコツコツ「資産形成」をしたい人
  • 一般NISA:利益が非課税になるメリットを活かして、短期的な株式取引でお金を増やしたい人

 

また、つみたてNISAとiDeCoを併用したり、夫婦でつみたてNISAと一般NISAを使い分けたりする投資方法も考えられます。

 

 

3.3. 商品の入れ替えができない

つみたてNISAで購入した商品は売却していつでも資金を引き出せますが、その年の非課税投資枠が残っていない限り、売却した資金で他の商品を買うことはできません。

 

つまり、つみたてNISAは非課税枠の再利用ができません。

 

たとえば、Aファンドを30万円分積み立てていたところ、Bファンドに乗り換えたいとします。そのようなとき、Aファンドを30万円分売却して、その資金でBファンドを30万円分購入することはできません。残った年間の非課税枠10万円(=40万円-30万円)の範囲内で、新たに買うしかありません。

 

また、年間で40万円の非課税枠を使い切らなかったとしても、翌年の非課税投資枠が増えることはありません。つまり、つみたてNISAは非課税枠の繰り越しができません。

 

そのため、つみたてNISAの最初の銘柄選びは慎重に行い、もし途中で変更する場合は、以前の商品はそのまま保有することをおすすめします。

 

 

3.4. 損した場合の税制優遇を受けられない(損益通算と繰越控除ができない)

つみたてNISAの口座で発生した損失は、課税口座である特定口座(もしくは一般口座)で出た利益と「損益通算」や「繰越控除」ができません。

 

売却するときの話なので、わからなければ読み飛ばしても大丈夫なのですが、簡単に言うと、「つみたてNISAには損失が出たときの税制優遇はない」ということです。

 

■「損益通算」と「繰越控除」…例を使って解説

 

たとえば、A証券で年間10万円の利益が出て、B証券で15万円の損失が出たとします。

 

確定申告をして損益通算すると、その年のトータルの損益は5万円の損失とみなされ、利益に対してかかる約20%の税金がかからなくなります。このように、損益通算を活用すると、利益が減って税金が安くなったり、ゼロになったりします。

 

「繰越控除」は、その年の取引で発生した損失は3年間まで繰り延べることができ、損益通算の対象になるという意味です。

 

しかし、つみたてNISAは金融機関と銘柄選びを間違えずに10年以上運用を続ければ平均リターンが安定します。そのため、始める段階から売却時のデメリットを考える必要はありません。

 

3.5. 非課税期間終了時に含み損の場合は取得価格が下がる

デメリットの5つ目は、20年後の非課税期間終了後のことです。ちょっとややこしい話になるので、「20年後のことなんか考えられない」という方は読み飛ばしても大丈夫です。

 

つみたてNISAは、その年に投資したものは必ずしも20年以内に売却する必要はなく、非課税期間終了後も保有し続けることができます。

 

その場合、20年経過したときの価格が新たな取得価格となり、課税口座(総合口座か一般口座)に移行されます。

 

次のチャートは、金融庁のサイトに載っている「一般NISA」の非課税期間終了後の話なのですが、「つみたてNISA」も同じルールなので、イメージをつかんでください。

 

つみたてNISAの非課税期間終了時に保有資産が値上がりした場合のイメージ図

つみたてNISAの非課税期間終了時に保有資産が値上がりした場合 (出所:金融庁「つみたてNISAのポイント」

 

購入価格が120万円で、非課税期間終了時(つみたてNISAの場合は20年後)に100万円に下落していた場合、新しい取得価格が100万円とみなされて課税口座に移行します。

 

その後、80万円に下落した場合は損失なので、課税されません(上のチャートの②パターン)。

 

しかし、130万円に上昇した場合は、本来の取得価格は120万円なので、差額の10万円の利益に対して課税されるはずです。しかし、20年経過した時点で100万円が新たな取得価格となっているので、差額の利益30万円に対して課税されるという、おかしな現象が生じます(上のチャートの①パターン)。

 

20年後の価格はイメージできないかもしれませんが、頭の片隅に入れておいて損はありません。

 

 

4.「つみたてNISAのメリット・デメリット」まとめ

積立NISAのメリットとデメリットまとめ
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

この記事では、つみたてNISAのメリットとデメリットを中心にお伝えしました。

 

つみたてNISAは、投資の利益にかかる税金を国が免除してくれるお得な制度です。そのため、デメリットがあるからやらないのではなく、制度をよく理解したうえでリスクと向き合い、少額からでも始めることが大切です。

 

この記事を参考にして、勇気を持って資産形成への一歩を踏み出しましょう。