(※写真はイメージです/PIXTA)

社会の高齢化とともに深刻さを増す、家賃滞納問題。ここでは、「川崎市で40年ほどネジ工場を営む影山さん(73歳)」の家賃滞納トラブルについて、OAG司法書士法人代表・太田垣章子氏が解説します。 ※本記事は、書籍『老後に住める家がない!』(ポプラ社)より一部を抜粋・編集したものです。

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    「工場閉めたら生きていけねえんだよ」高齢者の叫び

    解約の書面もあったので、解除の手続きを取ることなくそのまま訴訟を提起。訴状が届いた頃、影山社長から電話がありました。

     

    「出る気ないから」

     

    滞納している状態であっても、まだ明け渡す決心がついていないようです。滞納していることに対して、一言の謝罪もありません。これ以上滞納額を増やさないようにするためにも、1日でも早くの任意退去を促しました。電話越しの影山社長は、納得している様子はありません。

     

    「工場閉めたら生きていけねえんだよ」

     

    その言葉を残して、電話は切れてしまいました。

     

    その後、影山社長の代理人から答弁書が提出されました。内容は「解約の書面は強制的に書かされたもので、真意ではない」ということ。初回の期日は、欠席するというものでした。

     

    争う内容の書面が提出されると、裁判所としては次の期日を入れざるを得ません。1ヵ月先の期日が指定され、この間にも家賃は発生。払われていない滞納額は、250万円を超えていきました。

     

    家主は代理人がついたこと、争う姿勢を見せたこと、期日を延ばされたことに激昂。代理人に払う費用があるなら、家賃払えと怒り心頭です。

     

    司法の現場は、家主は金持ち、賃借人は貧乏という認識のもとに、極端に賃借人保護に偏っていると感じます。あまりに現場の認識と、かけ離れていることもあります。今回のようなことに遭遇すると、家主は大変だな……と思わざるを得ません。

     

    そしてこの間も工場の機械は稼働し、影山社長は日銭を稼ぎ続けました。

     

    2回目の期日、影山社長の代理人も出席して審理が行われました。

     

    代理人は答弁書の通り、解約書面の無効の主張です。しかしながら長年存続した法人の代表者の押印。「真意を分からなかった」では通りません。滞納額も高額であるため、裁判官からの和解が促されました。

     

    「賃借人も高齢で後継者がいないなら、明け渡す方向で話し合ってください。滞納額がこれだけあれば、継続ということは難しいと思いますよ。賃借人の説得、お願いしますね。原告側も滞納額を放棄する等、譲れるラインを相談してきてください」

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    老後に住める家がない!

    老後に住める家がない!

    太田垣 章子

    ポプラ社

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