
日本人の資産構成は、預貯金に大きく偏っています。預貯金はインフレに弱いリスク資産なのですが、株や外貨のリスクと比較・検討し「インフレは来ない」という方に賭けて預貯金を持ち続けるという選択をしている人が多いのでしょう。しかしそんな方にピッタリの、株や外貨のような値下がりリスクがなく、インフレリスクにも強い商品も存在します。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。
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株式投資も、外貨購入も、インフレリスクも怖い人
筆者は折にふれ「預金はインフレに弱いリスク資産だから、インフレに強い株や外貨も資産の一部として持ちましょう」と分散投資を勧めています。それでも「インフレが来るとは思わない」と無視する人も少なくありませんが、まあ、それは仕方ないことですね。
ただ、インフレは怖いけれども、株や外貨の値下がりリスクのほうが怖いから、「やっぱり、老後資金は全額銀行預金にしておく」という人も多いはずです。
そういう人にお勧めなのが「個人向け国債10年物」と「物価連動国債」です。あまり馴染みがないため、初耳だという人も多いと思いますが、これらは値下がり等のリスクがほとんどなく、インフレにも強いので、検討してみてはいかがでしょうか。
一般的な国債は、インフレに弱い「リスク資産」だが…
国債というと、普通の10年もの国債が圧倒的に有名です。これは、発行されたときに今後10年間の支払い金利が決まっているものです。
今後10年間の支払い金利が決まっているということは、今後仮にインフレになって金融が引き締められて世の中の金利が上がっても、持っている人が受け取れる金額は変わらないので、インフレに弱いリスク資産ということになります。
銀行預金であれば、インフレになれば少しは金利が上がるでしょうが、普通の国債はそれさえも期待できないわけです。
金利がある程度高いときであれば、それも選択肢でしょうが、いまのような低金利のときにほとんどゼロの金利を10年間にわたって確定してしまうというのは、ぜひとも避けたい選択肢のひとつですね(笑)。
インフレに強くリスクも小さい「個人向け国債10年物」
個人向け国債10年物(以下、「変動10」と記す)は、国債なので政府が破産しない限り必ず償還されますし、元本保証です。特徴は、発行されるときに将来の利払い額が決まっていないということです。毎回の利払日に、今後半年間の金利が決まるのですが、それは長期金利の0.66倍という水準になります。
つまり、将来インフレになると長期金利が上がり、それにともなって「変動10」を持っている人が受け取れる金利が増える、というわけです。
将来インフレにならなくても最低限の金利は受け取れますし、発行から1年経過すれば中途換金も可能です。過去2回分の受取金利を返還しなければなりませんが、中途換金手数料等はかからないので、元本割れは起きないわけですね。