医師が「首から聴診器をぶら下げる」ようになった歴史的背景 (※画像はイメージです/PIXTA)

医師には、首から聴診器をぶら下げているイメージがあります。診察する際に、聴診器や打診器を使うのはいまや常識ですが、聴診器や打診器はいつ頃から使われているのでしょうか。聴診法や打診法で何がわかるのか、聴診器と打診器が生まれた背景について解説します。

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聴診器の発明と聴診法

聴診器を使った聴診法は、1819年に臨床医学者兼病理解剖学者である、フランスのラエンネックが考案したもので、間接聴診法と呼ばれます。それ以前には直接聴診法といって、患者の胸に直接耳を当てて、心音や呼吸音などを聴いて、診断する方法が用いられていました。

 

直接聴診法は、古代エジプトや古代ギリシアには、すでにあったということですから、かなり古くから行われていたことがわかります。しかし、直接聴診法は患者の体に耳を当てなければならず、音が濁って聞き取りにくいといった欠点がありました。

 

ラエンネックが最初に作った聴診器は、厚紙を筒状に丸めたもので、片耳に当てて胸の音を聴いていました。これはまだ発明とは言えないレベルですが、ラエンネックによって初めて、間接聴診法を用いた診察が行われたことになります。1829年には、イギリス人のカミンズが、片耳用の自由に折り曲げできる聴診器を発明しました。

 

現在使われているような、両耳用の聴診器が発明されたのは、1850年代に入ってからでした。アメリカの医師キャマンが1850年に、リアードが1851年に、それぞれタイプの違う両耳用の聴診器を開発しています。さらに、1860年代になると、チューブが2本ある聴診器が開発され、現在の聴診器に近づいてきました。

 

最初の頃は厚紙を丸めただけのものや、木筒などの簡素な聴診器でしたが、現在では音を自由に増幅できる、デジタル式の聴診器も開発されています。このように、聴診器が進化したおかげで、どれだけ医療に貢献したかわかりません。今後、遠隔医療が本格的に始まると、ハイテク聴診器の需要はさらに拡大していくことでしょう。

打診器の発明と打診法

患者の胸を直接打診して、その音によって、病気を診断する方法を提唱したのは、オーストリアの医師アウエンブルッガーです。これは、アウエンブルッガーが1761年に発行した、著作の中で発表されています。

 

アウエンブルッガーの父親が酒屋を営んでいたので、ワインの樽を叩いた際、酒が入っている位置までくると音が鈍くなることから、ワインの残りを知ることができました。これにヒントを得たアウエンブルッガーは、人の体を叩けば、体内の状況がわかるのではないかと考えたのです。実際に患者が死亡したあとに病理解剖してみると、鈍い音がした箇所に病変が見つかったので、アウエンブルッガーは自説が正しいことを確信します。

 

そこで、アウエンブルッガーは、この内容を論文にまとめましたが、当初はあまり注目されませんでした。しかし、1808年にフランスのコルヴィザールが、その論文を翻訳中に、打診した音の特徴や、音の原因となった症状について解説を加えたところ、にわかに注目を集めることになります。

 

その後、1826年にフランスのピオリーが、胸と打診器の間に硬いものを置くと、音がハッキリ聞こえることを発見しました。このように、打診器と打診法が次々と開発され、多くの医師が有効な病気の診断法として、採用するようになったのです。

聴診器で何がわかるのか

聴診器は、主に胸に当てて、心音と呼吸音を聴くためのツールです。では、心音と呼吸音から、何がわかるのでしょうか。

 

*心音

 

心臓には4つの弁がありますが、この弁が開閉するときに出るのが心音です。弁に異常があると、心音に変化が現れるので、心臓の病変を発見する手がかりになります。また、心臓や血管には血液が流れているので、血流に滞りがあったり、逆流するようなことがあれば、雑音として聴こえるのですぐにわかります。また、心筋に異常があると、心音が大きく聴こえるなど、普段とは違う音が聴こえることも多いようです。そのため、心音を聴くことによって、心臓弁膜症や先天的な心疾患、心不全の発見に役立ちます。また、心音の乱れによって、不整脈が発見される場合もあります。

 

*呼吸音

 

聴診器を胸に当てると、空気を吸ったり吐いたりするときに、肺に空気が出入りする音が聴こえます。これが呼吸音です。肺への空気の吸い込みが弱いと、何らかの異常があることがわかります。肺炎や肺水腫などで肺に異物が溜まっていると、呼吸音に雑音が混じるので、これらの病気の発見に役立ちます。

聴診器や打診器を使うメリット

聴診器や打診器を使って診断すると、おおよその病気の診断はできますが、確定診断はできません。確定診断をするためには、もっと精密な検査が必要ですが、聴診器や打診器は簡単に使える上に、症状の傾向をつかめるので非常に役立ちます。

 

聴診器や打診器によって、心臓の病気の疑いがあることがわかれれば、心電図や心臓カテーテル検査などで、さらに詳しく調べることができます。肺の病気の可能性があれば、X線やCT、MRIなどの検査を行うことによって、病巣を発見することができるでしょう。

 

聴診器や打診器の最大のメリットは、手軽に持ち運べて、しかも電気がなくても使えることです。最先端医療機器は、すべて電気がないと使用できません。しかし、聴診器と打診器は、たとえ離島であってもどんな山の中でも、さらには災害で停電中でも、医師さえいれば使用することが可能です。

 

確定診断はできなくても、どの程度のリスクがあるか、病院への搬送を急いだほうがよいかなど、緊急時の判断に役立ちます。いまや医療器具の多くは、デジタル機器がメインとなっていますが、医師が首から聴診器をぶら下げたアナログな姿には、病気で苦しむ人をホッとさせるものがあります。
 

 

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1955年宮崎県生まれ。明治学院大学文学部英文学科卒業。システムエンジニア歴25年。フリーライター歴15年。初期の頃は雑誌など紙媒体を中心に、現在はWeb記事を中心に執筆。執筆記事数は7000本を超える。
サブカルチャー、ムック本などのほか、時事ニュースやコラム記事の執筆もある。歴史が好きで、幕末史に独自の見解を持つ。大正時代、昭和初期の歴史にも興味があり、誰も書かなかった近代史を書きたいとの構想がある。
著書:
鹿児島あるある(TOブックス)
勝手に現代風にアレンジしたことわざ辞典(三交社)

著者紹介

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