従来のプロ野球の試合中継は、かつて球団は、「映像」に関してはほとんどノータッチでした。球団がテレビ局に「放映権」を販売することで、テレビ局はスタッフやカメラ、中継車を球場に用意し、アナウンサーと解説者が現場へ来て、その映像に声を乗せて放送するという仕組みでした。しかし今や、球団が自ら制作した映像を各テレビ局に「売る」時代に変わりつつあります。球団が映像制作に着手する意義とは何か。西武の「球団映像」の責任者・髙木大成氏より聞いた、21世紀の球団ビジネスの一部を見ていきましょう。

ライブやイベント…「球団の映像技術」の使い道は様々

実際、メジャーリーグ中継では、現地の中継映像を見ながら、国内で日本語の実況と解説をつけて、放映するケースがもっぱらだ。

 

このパターンなら、応用はいくらでも利く。だからこそメジャーでは、自分たちのテレビ局すら開設している球団もある。

 

ソフトバンクも、本拠地・福岡PayPayドーム横に建てたエンタメビル「BOSS E・ZO FUKUOKA」の中にスタジオを設置している。試合中継の後にそのまま、そのスタジオからホークスに特化した番組も放送している。

 

「スタジオを作れば、CMも作れますし、テレビ局1個、あるようなものなので」

 

髙木の説明には、うなずかされるばかりだ。その“活用形”もいくらでも生み出せる。

 

「メットライフドームですと年に数十回、コンサートなどのイベントがあったりします。これからの時代、映像配信というのは当たり前になってくると思うんですね。そういうときに、球団で請け負うことができるようになるかもしれないですね」

 

スタジアムからの中継のノウハウは、十分にある。大勢のスタッフが来場しなくても、西武球団が中継を引き受けることができる。

 

西武は2021年(令和3年)のシーズン開幕に合わせ、3年をかけ、本拠地のあるメットライフドームエリアの大規模改修に乗り出していた。

 

「Lビジョン」と呼ばれるセンター奥の大型ビジョンも、これまでの2倍に面積が広げられた。高さ13メートル、面積は約600平方メートル。バックネット裏にも幅10.2メートル、高さ5.6メートル、面積約57平方メートルのサブビジョンも設置される。

 

迫力を増す映像や音響での演出は、場内各所に設置される「デジタルサイネージ」とも連動している。

 

例えば、西武の選手が本塁打を放てば、球場内のどこで何をしていても、ホームランを打ったときの映像演出が流れるため、その興奮を逃すことはないというわけだ。

 

こうした映像関連のハード面を充実させていくことは「スタジアム・ビジネス」をさらに展開していくためには、不可欠の要素でもある。

 

ドームを活用したアーティストのライブや企業のイベントで、大きなビジョンやクリアな音響装置は、むしろ野球のときよりも重要視されるのだ。球団だから、ドームでは「野球」と限定しなくてもいいのだ。

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稼ぐ! プロ野球 新時代のファンビジネス

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喜瀬 雅則

PHP研究所

「野球」だけがビジネスではない! データ活用、SNS戦略、グッズ展開、コミュニティ…利益と熱狂を生み出す“勝利の方程式”とは? プロ野球を見れば、いまのビジネスがわかる――。少子高齢化に伴う「野球離」が進み、…

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