(※写真はイメージです/PIXTA)

住宅金融支援機構が公表しているデータによると、コロナ禍の現在、25人に1人が住宅ローンの返済に問題を抱えていると分かっています。他人事ではない住宅ローン危機。解決策はあるのでしょうか。離婚した後、マイホームの住宅ローンを返済できなくなったFさんの事例をもとに、クラッチ不動産株式会社代表取締役の井上悠一氏が解説します。

「住み続けられる方法」はあるが、煮え切らないFさん

住宅ローンの支払いに困窮しても、自宅に住み続けられる方法はあります。

 

その方法とは、「親子(親族)間売買」※1と「リースバック」※2です。

 

※1 住宅ローンが残った自宅を、子どもや兄弟、叔父叔母、姪甥などに売却すること。単に、親子間、親族間で不動産を売買するだけでなく、売却後も元の所有者が自宅に住み続けることができる。

 

※2 リースバック…不動産会社・金融会社・投資家などに自宅を売却し、買主から自宅を賃貸する方法。所有権を移転するため「自分のもの」ではなくなるが、賃料を支払って住み続けることができる。

 

Fさんのケースでは、別れた妻が自宅を買い受けてくれれば問題は解決できるのですが、別れた妻はパート勤務なので住宅ローンの審査が通りません。かといってほかに、住宅ローンを組んでまで自宅を買い受けてくれる親族もいなかったため、親族間売買はできません。

 

そこでリースバックを提案させてもらったところ、当初、リースバックでは自宅の所有権を買い手となる他人に移転しなければならないことに抵抗があったようで、その場で承諾を得ることはできませんでしたが、後日、ほかに方法がないと分かると、リースバックで話を進めてほしいと連絡がありました。

 

Fさんの自宅は大阪の都心部へのアクセスもよくファミリー層に人気の中古マンションだったので、売却金額が高く、そのわりには賃料を低額で抑えてもらえる⃝社に購入依頼をもちかけたところ、賃料を毎月11万5000円支払ってもらえるなら相場よりも少し高い2000万円で購入するとの回答がありました。

 

売却金額が2000万円で賃料が11万5000円とすると利回りは6.9%になります。リースバックの場合、一般的に利回りが10%を下回ると、売却金額を下げるか、賃料を上げるかして、利回りを10%に近づけなければ、なかなか買い手を見つけることが難しくなりますが、Fさんのケースではこれ以上売却金額を下げると住宅ローン債権者の同意が得られないこと、かといって賃料を引き上げてしまうと支払いができなくなりますから、リースバック自体を成立させても意味がなくなります。

 

今回のケースでは、事前にFさんから聞き取りしていた賃料の支払可能額が、12万円であったことから、⃝社に買い取ってもらえれば、リースバックで問題を解決することができます。

 

ただ、住宅ローンの滞納が半年続いていたので、通常であれば、いつ競売を申し立てられてもおかしくありません。実際、Fさんのもとには期限の利益喪失を伝える通知が届いていて、住宅ローンの債権者も融資先の住宅金融支援機構からサービサーである□社に変わっていました。

 

Fさんのケースでは、債権回収会社に連絡を入れた時点で、競売申立ての準備中でしたが、2000万円を返済してくれるなら、競売ではなくリースバックに応じるとのことでした。

 

リースバックの話がまとめれば、Fさんは所有権こそ失いますが、別れた妻と息子を自宅に住み続けさせることができますので、一件落着かと安堵していたのですが、肝心のFさんの態度がどうも煮え切りません。所有権を失うことにわだかまりがあったのでしょうか。

 

Fさんからリースバックを進めるゴーサインが出ないまま1ヵ月が経過し、ついに競売が申し立てられてしまったのです。焦ったFさんから「1日でも早くリースバックの話をまとめてほしい」と連絡がありました。

次ページ「競売が申し立てられた」Fさんの行く末

※本連載は、井上悠一氏の著書『あなたを住宅ローン危機から救う方法』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

あなたを住宅ローン危機から救う方法

あなたを住宅ローン危機から救う方法

井上 悠一

幻冬舎メディアコンサルティング

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