コロナ禍の現在、病床のひっ迫などを背景に自宅療養者が増加するなか、これまで以上に在宅医療への注目が集まっています。ただ、同時に在宅医療への「誤った認識」をもった利用者も増えているのが現状です。今回、医療法人あい友会理事長の野末睦氏が、在宅医療を巡る現状について語ります。

コロナ禍の現在、在宅医療は「緊急事態」を迎えている

筆者たちが普段診ている患者に急な対応を要することがあった場合、多くは、医師が駆けつけて、適切な治療を試みます。しかし、この「駆けつける」こと実態も理解してもらう必要があります。

 

筆者のクリニックのように、10人ほどの医師がそれぞれ看護師と訪問診療アシスタントを伴って、診療圏を回っている場合でも、その日の訪問予定はかなりぎちぎちに詰まっています。そこに急な診療を割り込ませていくわけですから、「駆けつける」といっても限度があります。

 

普通は連絡があってから1時間はかかります。日によって、そのような患者の出現に備えて、1人のドクターをクリニックに待機させておく余裕があることもありますが、その場合でも患者宅が、クリニックから車で30分かかることはザラです。

 

筆者のクリニックでは基本的には、月に2回の定期訪問を予定された日時に行うように計画しており、急な診療の要望には、どうしても時間単位での対応になってしまいます。さらに短時間での対応が求められるときには、救急車を呼んでもらうようにお願いしています。

 

コロナ禍で自宅療養者が増えていますが、東京都では重症化した自宅療養者に対して、在宅医が診察に加えて酸素濃縮機を届けるという事態も起きています。これは上記の原則に照らし合わせると、とても例外的な対応といえるでしょう。

 

普段は健康な人がそのような状況に陥っている場合は画一的な対応を行えばいいですが、糖尿病などの基礎疾患がある人には注意すべき点が出てくるので、事前情報が極めて重要です。

 

それらを聞き取りながら、防護服に身を包み自分の感染のリスクと隣り合わせで診療するのですから、そのストレスはまさに極限といってもいいでしょう。これは決して、理想の在宅医療ではありません。非常事態なのです。

 

次ページ在宅医療の利用者にみられる「誤った認識」

※本記事は、最先端の「自分磨き」を提供するウェルネスメディア『KARADAs』から転載したものです。

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