自分の子も実験台にした…「ワクチン」が天然痘を根絶した背景 (※画像はイメージです/PIXTA)

天然痘は、世界中を恐怖に陥れた伝染病です。日本では致死率が40%を超え、流行するたびに多くの死者が出ました。江戸時代の平均寿命は、40歳以下だったと言われていますが、その原因は、天然痘のために10歳以下で死ぬ子供が多かったからです。そんな天然痘も、種痘法が普及すると沈静化していきました。

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天然痘の蔓延と種痘法

天然痘が予防できるようになったのは、イギリスのエドワード・ジェンナーが、種痘法を確立したからです。ジェンナーは、一度天然痘にかかると、もうかからなくなるのではないかと考えていました。

 

今の医学の常識では、一度感染症にかかると免疫ができるので、同じ感染症にかかりにくくなることがわかっています。しかし、ジェンナーの時代には、まだ免疫のことはわかっていなかったので、この点に着目したジェンナーは、さすがと言うべきでしょう。

 

ジェンナーは、牛痘にかかった女性から採取した膿を、ジェンナー家で働いていた使用人の息子の、フィリップという8歳の少年に接種して、天然痘ワクチンを作りました。今なら、インフォームド・コンセントの点で、大問題になるところですが、こうして作られたワクチンのおかげで、天然痘は根絶されたのです。それでも、ジェンナーの種痘法から根絶までに、200年もかかっているので、感染症のウイルスを完全になくすことが、いかに大変なことかよくわかります。

 

天然痘ウイルスは、アメリカとロシアが研究用に保管していましたが、生物兵器に転用されるおそれがあるため、すべて廃棄されました。そのため、天然痘ウイルスは、完全に地球上から姿を消したのです。ちなみにジェンナーは、使用人の息子を人体実験に使う6年前に、自分の子供を人体実験に使っています。一方的に使用人の息子だけに、人体実験をしたわけではないようです。

日本にも種痘法が拡大

ジェンナーが人体実験に成功してから6年後、日本でも秋月藩医の緒方春朔が、人の天然痘から採取した膿を子供に接種する実験を行い、無事成功しました。しかし、人の天然痘を接種すると、天然痘を発症するおそれがあるので非常に危険です。そこで、牛痘を使った種痘法のほうが安全なのですが、牛痘の膿を入手する方法がありませんでした。

 

そんな中、佐賀藩医楢林宗建が、牛痘種の取り寄せを藩主鍋島直正に進言した結果、1874年にバタヴィアから入手することができました。その後、佐賀藩主鍋島直正が、痘苗を江戸藩邸に送ったことから、江戸に「お玉が池種痘所」が開設され、種痘法が江戸を中心に広がり、全国に拡大していくことになります。このようにして、日本でも世界でも、天然痘患者はしだいに減っていったのです。

天然痘とは

天然痘は、人だけに感染する感染病です。空気感染や飛沫感染のほか、患者の患部に触れたり、患者の呼気から感染することもあります。また、患者の衣服や寝具、使ったタオルなども、感染源となるので注意が必要です。

 

感染すると、1週間から2週間程度の潜伏期間があり、その後発熱や頭痛、悪寒などの症状が現れます。一時的に熱が下がることもありますが、口の中や喉の粘膜、顔や全身に発疹が広がります。発疹がかさぶたになると、色素が沈着したり、かさぶたの痕があざとなって残ります。かさぶたが自然に取れるまでは、感染するおそれがあるので隔離が必要です。

 

これが主な天然痘の症状ですが、まれに脳炎を起こすこともあるようです。日本では、昭和51年に種痘が中止されたので、現在は行われていません。もし万が一、日本で天然痘を発症したら、患者と接触者に対して、国家備蓄のワクチンが接種されることになっています。

ジェンナーの功績

ジェンナーは、天然痘の予防法である種痘を開発しました。天然痘は感染力が強いので、1人でも発症者が出ると、あっという間に広がってしまいます。この天然痘の感染を予防したのが、ジェンナーです。

 

人類の歴史は、感染症ウイルスとの戦いの歴史と言われます。人間に脅威を与えたウイルスの中でも、天然痘は1万2千年前から存在しており、数えきれないほどの感染を繰り返して、多くの人命を奪いました。天然痘は、国のトップや指導層の命も数多く奪っているので、もし天然痘がなかったら、歴史が変わっていたかもしれないと言われるほどです。

 

ジェンナーが種痘を開発できたのは、牛の乳しぼりをしている人との会話がきっかけでした。会話の中でジェンナーは、「牛痘にかかった人は、天然痘にかからない」という話を聞いたのです。そこで、牛や豚を使って実験を繰り返した結果、効果を確信したジェンナーは、前述のように使用人の息子を使って人体実験を行い、種痘を完成させました。

 

ジェンナーが生まれ育ったのは、イギリスの酪農地帯です。酪農家では、牛の皮膚に痘疱ができる伝染病が、流行することがありました。特に、牛の乳房に痘疱ができることが多く、乳しぼりの際にこの痘疱に手が触れると、牛痘にかかって自然に治りました。こうして、酪農家のほとんどの人が、知らず知らずのうちに、牛痘にかかっていたのです。

 

しかも、牛痘にかかると天然痘にかからないことも、酪農家は経験上知っていました。このように、ジェンナーの功績は、彼が酪農地帯に育ったことが大きかったのです。当時、種痘法を研究していたのは、ジェンナーだけではありませんでした。ところが、1940年に当時のイギリス政府が、ジェンナーの種痘法以外の種痘を禁止します。それほど、ジェンナーの種痘法が、優れていたということでしょう。

 

大成功をおさめたジェンナーですが、彼は種痘法の特許を取りませんでした。特許を取ると、ワクチンが高くなって、多くの人にいきわたらなくなるからです。このエピソードに、ジェンナーの人柄がよく表れています。
 

 

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1955年宮崎県生まれ。明治学院大学文学部英文学科卒業。システムエンジニア歴25年。フリーライター歴15年。初期の頃は雑誌など紙媒体を中心に、現在はWeb記事を中心に執筆。執筆記事数は7000本を超える。
サブカルチャー、ムック本などのほか、時事ニュースやコラム記事の執筆もある。歴史が好きで、幕末史に独自の見解を持つ。大正時代、昭和初期の歴史にも興味があり、誰も書かなかった近代史を書きたいとの構想がある。
著書:
鹿児島あるある(TOブックス)
勝手に現代風にアレンジしたことわざ辞典(三交社)

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