患者の思いを汲み、歯科医師たちが工夫を凝らすも…
もちろん、歯科医師たちも患者の「ワイヤー矯正は格好悪い」「矯正は痛いからやりたくない」という声に、耳を傾けてこなかったわけではありません。
1976年には藤田欣也先生という日本の歯科医師が世界で初めて舌側矯正治療(リンガルブラケット法)をアメリカ矯正歯科学会誌で発表しています。
これはそれまでスタンダードだった、歯の表側に矯正装置をつける方法ではなく、歯の裏側にリンガルブラケットという器具をつけるという方法で、圧倒的に目立ちにくく、人目が気にならないのが最大のメリットです。
ほかにも下の歯の表側にブラケットをつけ、器具が目立ちやすい上の歯だけ歯の裏側にリンガルブラケットを装着する「ハーフリンガル矯正」というものもあります。しかし、いずれにしても歯の裏側はただでさえ磨き残しが多い部分なので、ワイヤーがあることでさらに食べものが挟まりやすくなり、歯磨きがしにくくなります。また、舌の動きを阻害しやすく、しゃべりにくくなるというデメリットもあるのです。
その後、ブラケットだけでなくワイヤーも目立たないよう、歯と同じ白で色をつけた「コーティングワイヤー」や、ブラケットをピンクや青などカラフルな色にして、矯正治療そのものを前向きに楽しんでもらおうという「カラーエラスティック」という矯正装置も一時は人気になりました。ところが四六時中ワイヤーをつけていると、コーティングがはげてきたり、カラーブラケットは余計に目立って恥ずかしいといった声が上がったりして、さほど浸透はしなかったのです。
このように、矯正治療が抱える問題に歯科医師たちは向き合ってきましたが、すべてを解決する策はなかなか見つからないままでした。
三嶋 一平
医療法人むらつ歯科クリニック勤務医
【関連記事】
税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
恐ろしい…銀行が「100万円を定期預金しませんか」と言うワケ
親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】