(※写真はイメージです/PIXTA)

社会の高齢化とともに深刻さを増す、家賃滞納問題。ここでは、「千葉で理容店を営む80代夫婦」の家賃滞納トラブルについて、OAG司法書士法人代表・太田垣章子氏が解説します。 ※本記事は、書籍『老後に住める家がない!』(ポプラ社)より一部を抜粋・編集したものです。

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    「転居して生活保護を受給」安堵したのもつかの間…

    裁判の期日前に、先生の方から次のところが見つかって転居したとの連絡を受けました。近くの市営住宅のようです。自営で国民年金をかけておらず、貯金もほとんどないようで、生活保護を受給するとのことでした。

     

    ご夫婦も若いときには、それなりに稼いでいた時期もあったと思います。その頃の貯金を、晩年に食いつぶしてしまったということでしょうか。お店を閉められなかったのも、開けてさえいれば日銭が入るからかもしれません。サラリーマンは望まなくても定年という制度がありますが、自営の場合には自分で幕引きをしなければなりません。

     

    80代の理容師夫婦。人生の最後に破産だなんて、ちょっと寂しい幕引きです。もっと他にやりようはなかったのでしょうか。

     

    怒っていた家主ですら切ない気持ちになっていましたが、それでも強制執行等で明け渡しではなく任意に退去してもらえたことには感謝。とりあえず良かったか、なんて話し合いながら退去後の物件を見に行きました。

     

    ところが明け渡された現地に行ってみると、そんな思いは吹き飛びました。二人で顔を見合わせて、怒りで血圧が急上昇です。

     

    なんと賃借人夫婦、本当に必要な物だけを持って夜逃げみたいな退去をしたのです。押し入れの中には、古い布団がぎっしり。食卓の上には、退去前に食べた皿がそのままです。部屋の中は、ゴミと脱ぎ捨てた服が重なり合っています。箪笥の中も、物がぎっしり。

     

    お店の方に回ってみると、こちらも何もかもが残されています。商売道具だったハサミもカミソリもそのまま。使い終わったタオルも、そのまま放置です。生乾きの状態で、悪臭が漂っていました。床にも短い毛が落ちたままです。散髪を施して、床を掃くこともなく退去したのでしょう。

     

    建物の外側にも、車が入りそうなくらい大きな物置があって、その中にも物がぎっしり。必要な物を探した後なのか、物が散乱していました。明け渡したというよりは、立ち去ったという感じです。

     

    これには家主もカンカン。

     

    「これって明け渡しと言えるんですか? 立つ鳥跡を濁さずという言葉を知らないんですかね。ほんと頭にきます! 代理人はどうなっているんですか。確認すらしていないというなら、言語道断。確認しても知らん顔というなら、本人のみならず、代理人も許せません」

     

    家主の怒りは、ごもっともです。

     

    弁護士の先生に連絡をしてみると、先生もご存じなかったようでした。鍵が事務所に送られてきたので、退去の確認もせず、そのままうちの事務所に送ったようでした。見てらっしゃらないということだったので、主だったところを写真に撮ってメールしたら、すぐにお詫びの電話も来ました。

     

    物が入っている棚や押し入れ、物置には、すべて「処分してください」の張り紙はしてありますが、いったいこの処分にいくらかかると思っているのでしょう。家賃ですら破産手続きを取るということで、家主には1円も入ってきません。ある程度自分たちでゴミを捨て、どうしようもなく残ってしまった物を「お願いします」ということなら、まだ納得もします。しかしながら状況を見ると、荷物を整理したり片付けた形跡はなく、とにかく必要な物を持って出た、ただそれだけのようでした。

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      太田垣 章子

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