(写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、ニッセイ基礎研究所が2021年7月30日に公開したレポートを転載したものです。

4.貸家の着工も増加をし始めている

賃貸マンションの売買取引の増加と収益性の安定を背景に、貸家の着工戸数も増加している。これまで貸家の着工戸数(月次)は、前年比でマイナスという状況が、2017年6月から2018年7月までの14カ月、および2018年9月から2021年2月までの30カ月と、4年近く続いていた。それが、2021年3月以降は3カ月連続で前年比プラスに転じている(図表4)。

 

建設計画は、計画時点で、収益性が高く、完成物件の需要が高い用途が選ばれることが多い。現状において賃貸マンションの賃料水準は高値に安定しており、今後も旺盛な投資需要が見込まれることから、賃貸マンションの着工戸数は、今後も増加すると見込まれる。

 

なお、12カ月移動累計で見てみると、2021年5月は約30.7万戸と、直近のピークであった2017年5月の7割程度であり、まだまだ増加の余地はありそうだ(図表5)。

 

[図表4]貸家の着工戸数(月次) [図表5]貸家の着工戸数(12ヶ月移動累計)
[図表4]貸家の着工戸数(月次)
[図表5]貸家の着工戸数(12ヶ月移動累計)

 

5.数年後に賃貸派に良い時代がくるかもしれない

ただし、今後の需給バランスについては懸念もある。現在の賃貸マンションは、デベロッパーの目線で見れば、購入したいという投資家が市場に多く存在するため、開発しても投資資金を安全に回収できる可能性が高く、投資対象として選択しやすい。

 

また、賃貸マンションは、オフィスやホテルなどの商業系用途と比べて投資規模が小さく、適地も多い。相対的に建設計画の策定も容易で、参入障壁も低く、個人投資家から大規模資本の投資家まで、デベロッパーとなりうる層が厚い。

 

もし、多数のデベロッパーが同時並行的に次々と賃貸マンションを建設することになった場合、データ等を見て需要に見合った適正な供給量を見極めたり、開発スタート後に供給過剰や需要減に合わせて建築を延期したり中止することは、資金繰りや再施工者の手配が難しく、実際は極めて困難であると言える。

 

そうなった場合、数年後には、過去の事例と同様に実際の需要よりも賃貸マンションを作りすぎてしまう可能性がある。一方で、賃借する入居者側から見ると、多くの賃貸マンションが建設されれば、設備の内容や立地といった物件の条件の他、賃料の面でもニーズに合った選択肢が増えることになる。

 

これから数年後には、賃貸派の人にとって良い時期が来るかもしれない。

 

 

渡邊 布味子

ニッセイ基礎研究所

 

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