日本の職場は発展途上…疾患のある会社員「処遇が不安」な実態【医師が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

何らかの持病を持つ患者さんのなかには、会社でできない業務があったり、残業ができなかったりして、肩身の狭い思いをする方もいます。「誰にとっても働きやすい環境づくり」について、30代の透析患者・Bさんの事例をもとに、南青山内科クリニック院長の鈴木孝子氏が解説します。

「どんな身体状況であっても」働きやすい環境づくり

障害者が働きやすい環境づくりは、日本においてこれから進むであろうものの、現時点ではまだ道半ばの段階だと思っています。透析や原疾患の知識を得る機会は、一般の方にはほとんどありません。

 

医療機関としては、配置や人事に過剰に干渉する立場にはありませんが、患者さんが無理なく働けるよう意見はできますので、就労先に病状をきちんと伝え理解を促す働きかけがもっとあってもよいと思っています。

 

ただし、透析患者だからといって、やみくもに甘やかす、とか優遇する、ということがいいたいのでは決してありません。彼らにとって、透析時間が取れないことや、合併症にかかることは命に直結します。そうした命に関わる部分を、手厚く考えてほしいということです。

 

原疾患だけでなく、透析で何をするのかも雇用者にはもっと知ってほしいと思っています。例えば腹膜透析の場合は、会社の休憩時間などを利用して1日に数回は透析液のバッグを交換するため、その場所と時間が必要になりますが、それが周知されていないと、透析患者さんは肩身の狭い思いをしてしまいます。

 

※ 腹膜透析…腹腔内に透析液を出し入れする口(出口部)をつくり、そこにカテーテルを留置し、チューブをつないで数時間ごとに透析液の入れ替えをおこなう。

 

また、血液透析も決まった曜日、時間に施設へ行かなければならないので、残業ができず、早退が必要になるケースもありますが、理解がないと残業させようとしたり、もう帰るのか、などと嫌味を言われることもあり得ます。それでなくても、周囲が残業しているなか、自分だけ早く帰ることが後ろめたく、ストレスになってしまいます。

 

※ 血液透析…血管に血液をろ過するダイアライザーを取り付け、器械で血液を巡らせて直接、きれいにする仕組み。

 

裏を返せば、時間的な配慮が受けられれば透析者はずいぶん、働きやすくなるということです。業種や職種によりますが、血液透析であれば早番と遅番を設けてシフト制にし、透析日は早く帰れるようにするとか、医療スタッフ常駐のヘルスケアルームを設け、体調が悪くなったときに休めたり、腹膜透析の透析液バッグを交換できたり、健康管理のアドバイスが受けられたりするなどがあれば、透析患者も安心して働けるといえます。

 

昨今は在宅勤務も浸透してきました。時間や場所の融通が利くようになればより働きやすくなると期待をもっています。

 

 

鈴木 孝子

南青山内科クリニック 院長 

南青山内科クリニック 院長 医師

1992年3月、長崎大学医学部医学科卒業。
東京大学医学部附属病院、小平記念東京日立病院、社会保険中央総合病院で勤務。
2000年3月に東京大学大学院医学部医学系研究科内科学専攻博士課程修了。
高島平中央総合病院腎臓内科部長、森山リハビリテーション病院腎臓内科部長を経て、
2007年4月より駒込共立クリニック院長。
2011年6月に南青山内科クリニックを開業。

著者紹介

連載「生涯現役」をかなえる在宅透析

※本連載は、鈴木孝子氏の著書『「生涯現役」をかなえる在宅透析』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

「生涯現役」をかなえる在宅透析

「生涯現役」をかなえる在宅透析

鈴木 孝子

幻冬舎メディアコンサルティング

わが国で透析といえば一般的に、医療機関に通って行う「施設血液透析」のことを指します。 実際に9割の患者がこの方法で治療を受けています。しかしこの方法は、人間らしい生活が奪われるといっても過言ではなく、導入直後は…

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