(※写真はイメージです/PIXTA)

まるで冷戦時代(米ソ対立による各々の経済圏形成)と似たように、米国を中心、また中国を中心とした2つの経済圏が形成されようとしています。※本連載は、後藤康之氏の著書『最強の外資系資産運用術』(日本橋出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

中国最大の貿易相手国は依然米国…今後の展開は?

2019年末から一部報道で米国の規制について報じられていたこともあり、実際の規制強化導入は2020年5月になってから、だったが、ファーウエイ自身も徐々に一部の半導体生産をSMICに移管し始めていたそうです。その流れに応じて、中国政府は新型コロナウイルス対策で都市封鎖(ロックダウン)などを行っていた2020年2月から5月の期間中にも、SMICやUNISOCなど国家にとって重要な企業等を稼働させており、国内企業による半導体関連事業の開発(所謂インソーシング)を進めてきました。

 

また米中関係悪化を契機に、中国の半導体製造会社が米国製の半導体製造装置を使用できなったことで、スマホ各社は調達先としてサムスンの西安工場を頼らざるを得なく、漁夫の利のように、韓国のサムソンに一時、大きな受注が回ってきたようでもあります。

 

また時を同じくしてSMICは2020年7月16日に上海のハイテク関連株式市場『科創板』に上場して7000億円程度を調達したそうです。(比較対象として、東芝が40%を保有しているキオクシア(旧東芝メモリ)というフラッシュメモリーを製造している会社も、元々2020年10月に東京証券取引所1部に上場予定で時価総額約2兆円程度、と見られていましたが、結局上場延期となりました。)

 

『SMICへの投資家の強い関心は、習近平(シー・ジンピン)指導部が国策で進める半導体国産化の恩恵を受けるとの期待が背景にある。…米国は2020年5月、米国製の製造装置を使った華為技術(ファーウェイ)向け半導体の輸出禁止を表明しており、習指導部にとり国産比率の向上は喫緊の課題だ。中国政府は今後も採算度外視で関連産業への投融資や補助金を続ける公算が大きく、SMICも後押しを受けるのは確実だ。』

 

このような中国政府を含めた半導体関連の国内回帰の動きを発展させている一方で、米政府は2020年8月に更なる、対ファーウエイ包囲網を構築すると通知しました(同年9月15日から導入済)。

 

具体的には、米国製の製造装置や半導体設計支援ツール(EDA)などの設計ソフトを使用し製造した半導体(米国製でも米国外のもので)は、禁止リストに載っている会社(ファーウェイやSMICを含む)に供給する前に、事前に米政府の許可が必要である、という内容です。許可が下りればもちろんファーウエイに供給はできますが、許可自体かなり難しく、大半の半導体製造の現場で米国製が使われており、事実上ファーウエイに対する供給禁止と同様の意味になります。

 

米国の対ファーウエイの施策により、中国の隣国であるが軍事的(また経済的にも)米国と繋がりの深い日本や韓国(上記のサムソン)の企業は、短期的には米国側につくことになるでしょうし、当初想定されていた、台湾のTSMCが失った半導体製造需要の恩恵を受けるような状況にはならない模様です。

 

一方で中国最大の貿易相手国(製造業など)は依然として米国であり、関税などの貿易障害は中国にとって解決しないで済む問題でもなく、また半導体業界のように技術が日進月歩で進化し、米国の対中規制強化が進んだことで、SMICもすぐに半導体製造の開発できないという状況にほぼ陥ったことで、今後も両国間の様々な展開が予想されます。

後藤 康之
日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
国際公認投資アナリスト(CIIA)

 

 

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