(※写真はイメージです/PIXTA)

まるで冷戦時代(米ソ対立による各々の経済圏形成)と似たように、米国を中心、また中国を中心とした2つの経済圏が形成されようとしています。※本連載は、後藤康之氏の著書『最強の外資系資産運用術』(日本橋出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

米中対立が激化した半導体と「5G」

バイデン大統領になった今、多少の違いはあると思いますが、トランプ元大統領が仕掛けた米中対立の構図自体は変化しにくいでしょう。それは所謂、中国企業が米国製品を使えなくなる、または中米間での企業のM&Aは例外を除き、各国の規制当局により、何らかの形で妨害されることが予想され、マクロの経済圏として、まるで冷戦時代(米ソ対立による各々の経済圏形成)と似たように、米国を中心、また中国を中心とした2つの経済圏が形成されようとしています。

 

日本のように輸出先で第1ー2位の二か国に、今後も友好的にどのように対応、関係構築していくか、引き続き重要になると思います。

 

では、米中対立において争点となっている業種をピックアップし、解説していきます。

 

■半導体と通信(5Gテクノロジー)

 

2020年に入り米中対立がより深刻になった業界はこの2つであると思います。といってもどのように米中対立が影響しているかは分かりにくいと思うので、概要から説明していきます。

 

半導体は現代技術に欠かせない部品であり、パソコンや携帯、スマホ、サーバー(USBなど含む)に活用されています。また技術発展が早く、且つ継続的に多額の研究開発投資が必要であり、また在庫管理も難しいため、需要と供給のマッチングがとても重要な業界です。

 

また需給調整は短期で行われやすいため、業界の変動も激しいです。半導体の用途も様々ですが、大きく分けてメモリ系と非メモリ系が存在します。メモリ系は、特にデータセンター(サーバーや通信機器を設置した施設)向けに使用されるNANDフラッシュやDRAMなどであり、一方で非メモリは5G向け基地局投資や5G対応スマホに使用される集積回路などになります。

 

そして5G(第五世代の移動通信手段)ですが、『高速大容量』、『低遅延』、『多数同時接続』を特徴とした、超高速の通信システムであり、高速でYouTube などの高画質動画の視聴が可能になったり、自動車の自動運転化や、AR(拡張現実)やVR(バーチャルリアリティー、和訳は『仮想現実』)などを楽しむエンターテイメント向けにも役立てられ、所謂IoT(インターネット・オブ・シングス、和訳は『モノのインターネット』)という、様々なものがネットに繋がる時代には欠かせない通信手段になります。

 

これらを前提に、現在の半導体産業は、開発と製造を分離するという国際分業体制の下で成り立っています。半導体の開発においては、世界各国の企業が実施し、台湾積体電路製造(TSMC)などファウンドリーとよばれる製造ラインを備えた企業が受託生産します。その製造ラインには、東京エレクトロンなどの日本企業製やアプライドマテリアルズなど米国企業製の高性能な半導体製造装置が欠かせません。

 

5G対応の通信基地用の機材や携帯を製造しているファーウェイは、従前台湾のTSMCに半導体製造を委託、調達していましたが、米政府による2020年5月からの規制強化(具体的には、アプライドマテリアルズのような米国製の製造装置を使った半導体についてファーウエイ向けの輸出を禁止する処置)に伴い、TSMCからの調達が難しくなりました。

 

そこで中国政府は国有企業(SOE)の1つである、中芯国際集成電路製造(SMIC)への出資を増やし、ファーウエイもSMICへの委託を増やす方針を出しました。加えて、台湾の聯発科技(メディアテック)と中国国有企業の紫光集団系の紫光展鋭(UNISOC)も新たな委託先となる模様であります。

 

 

 

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