「大企業の粉飾事件」はなぜ起こる?公認会計士を取り巻く現状 (※写真はイメージです/PIXTA)

公認会計士はただ過去の記録を確認するだけでなく、経営者とともに「企業の未来を見積もる」役割をもっています。しかし役割はうまく機能していないこともしばしば。監査法人アヴァンティア・法人代表CEOである小笠原直氏が、企業と会計士について解説していきます。

監査法人の会計士が企業に対して果たす「役割」

監査法人の本来の立ち位置は、企業経営を継続させ、その発展に寄与することです。時には辛口の批評をすることも必要ですが、基本的には、企業の応援団であるべきなのです。

 

企業だけではありませんが、さまざまな組織を応援することによって、ひいては日本という国を活性化していくことが、私たちの使命だと考えています。

 

そうしたなかで、グローバルな超大企業は、私たちの「未来を見積もり、担保する能力」にそれほど重きをおいていないでしょう。自らの組織力、人材力でそれは十分に可能だからで、私たちには粛々と監査業務を遂行することを求めているというのが基本的なスタンスだと思います。しかし予定調和的な相互のスタンスが、東芝不適切問題等の超大企業の粉飾事件を阻止できなかったともいえます。

 

監査法人が本当に力を発揮できるのは、上場会社のなかでもオーナー系企業を中心に中堅企業から一般的な大手企業、そしてベンチャー企業に対してです。超大企業ほど安定したブランド価値がまだなく、企業業績も決して安定していない、そうした多くの会社です。

 

成長市場にあって、右肩上がりの期間はいいのですが、そろそろ成長曲線が安定してきた、あるいは売上が下がり始めたときに、その傾向は一過性のことなのか、循環的なものなのか、それともよくない兆候なのかということを見極める必要が出てきます。そうした場合には、いくら経営陣は強気でも、場合によってはそれに異を唱えることも必要になるわけです。

 

しかし、そこで新しい商品やサービス、事業が生まれてきた状況だとしたら、「既存事業がまだ収益を上げているうちに、この事業を伸ばしたい」「実際にマーケティングの結果、その可能性は十分にあると思われる」――こういった経営陣の期待値をどう見極めるかが同時に問われるのです。

 

ところが、問題は簡単ではありません。これは、現場の公認会計士だけの問題ではないからです。問題はマネジャーでも、パートナーでもありません。いちばん問題になり得るのが、監査法人本部の品質管理や審査会などの部署です。お目付役というか、ブレーキを踏む役。組織における防衛本能の中枢ですが、そもそもデフレ的なモノの見方、考え方をよしとする部署です。

 

例えばそうした部署では、現場の担当者が言わなくても、「これだけ急激に業績が悪化しているのだから、繰延税金資産の取り崩しが遅れて投資家を惑わせたら困るだろう。だからすぐに取り崩したほうがいい」などと言い出すはずです。

 

そうしたモノ言いに対して、現場の担当者やマネジャー、パートナーなどがどれだけ言い返すことができるかが問われるのです。

 

将来性について、あるいは現在の状況の原因について、しっかりとした情報源にあたってインタビューを行い、関連するさまざまな文献にあたって、しっかりとした理屈づけをして、例えば「会社の出してきた計画で掲げている数字は、100は無理かもしれないけれども、8掛けならば、これまでの実績からみて十分に信用できる」などとしっかりと説明できるだけの行動力と能力が必要になるわけです。

 

それができなければ、あるいはむしろ自分たちが慌ててしまうようでは、何でもかんでも「落としたほうがいい」「取り崩したほうがいい」という判断になってしまいます。

監査法人アヴァンティア 法人代表CEO 公認会計士

栃木県出身。1989年一橋大学経済学部卒業。
公認会計士第二次試験合格後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)、太陽監査法人(現太陽有限責任監査法人)を経て、2008年に監査法人アヴァンティアを設立・法人代表に就任。
日本公認会計士協会実務補習所副委員長、公認会計士修了考査試験委員、独立行政法人経済産業研究所評価委員、独立行政法人統計センター評価委員、相模原市外部包括監査人、慶應義塾大学環境情報学部准教授、千葉大学法経学部講師を歴任。
現在は、独立行政法人大学改革支援・学位授与機構監事、東プレ株式会社(東証第一部)社外取締役、都築電気株式会社(東証第一部)社外監査役、一橋大学大学院経営管理研究科講師と活躍の場を広げている。
監査法人アヴァンティアは、成長するミドルサイズの上場企業への監査を目的に2008年設立した「日本を支えるベンチャー監査法人」。
2021年7月1日現在、上場企業クライアント31社(業界12位)、メンバー113人。
「適正規模」の法人を標榜し、オーガニックな成長を提唱する「AVANTIA 2030」において、業界ベストテンを志向する。

著者紹介

連載監査法人の原点

※本連載は、小笠原直氏の著書『監査法人の原点』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

監査法人の原点

監査法人の原点

小笠原 直

幻冬舎メディアコンサルティング

公認会計士はいかなるときも正しくあれ 公認会計士の仕事とは、企業の決算書が会計基準に基づき、適正に作成されているか否かについて監査意見を表明することであり企業の信用を担保する重要なものである。 本書では、公…

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