(※写真はイメージです/PIXTA)

従来、製造業の多くは顧客からの発注に対応できるよう、常に一定の在庫を抱えていました。しかし、市場の変化スピードが急速に早まっている昨今、従来の経営手法が通用しなくなっています。

部品と製品の在庫を削減、キャッシュフローをV字回復

T社の社長は早急にキャッシュを生み出す方策を打ち立てるために、倉庫管理のプロジェクトを立ち上げました。

 

そして、

 

1.設計方針の改革

2.調達の改革

3.生産の改革

 

の3段階でキャッシュフローを増大させる計画を策定しました。

 

これらが「なぜ倉庫管理と関係があるのか」と思うかもしれませんが、考えてみれば当然のことです。

 

製品の設計によって、どのような部品を使い、どう生産するかが決まってきます。製品の企画や設計は倉庫管理と密接に関連してくるのです。

 

「設計方針の改革」ステップでは、汎用部品の活用と共通部品化を検討しました。競合他社の製品も調査しながら、汎用部品を使いつつ現状の機能と性能を実現する設計にしたのです。

 

部品単価を下げ、共通部品を増やすことで、調達コストを抑えつつ、在庫管理コストも削減することに成功したのです。

 

「調達の変革」ステップでは、専用部品から汎用部品に変えることによって、調達のリードタイムを大幅に短縮し、市場への新製品投入がスピードアップしました。

 

それにより、市場が変化しても柔軟に対応できるようになりました。

 

また、汎用部品のため余った在庫を引取る必要もなくなり、不良在庫リスクも解消されました。加えて共通部品を増やすことで、部品全体の在庫を減らしつつ、欠品も減らすことができました。

 

さらに汎用部品や共通部品の安全在庫を自動で算出する在庫管理システムに1000万円の投資をして、需要連動型の部品調達の仕組みをわずか3ヵ月で実現しました。

 

「生産の改革」ステップでは、大きく2つの点で生産のリードタイムを短縮し、製品在庫の滞留期間を短くすることで、キャッシュフローを増大させました。

 

1つは汎用部品に変えることによる部品調達リードタイム短縮です。

 

2つ目は設計をシンプルにし汎用部品、共通部品を利用することで、これまで自社工場生産にこだわっていた生産を積極的に協力工場にアウトソースしました。これにより、需要に対して柔軟性のある生産体制を構築することに成功したのです。

 

これらの3つの改革により、T社のキャッシュフローは1年強でV字回復しました。

 

現在では潤沢な資金を活用して新商品開発に投資を行っています。在庫管理の適正化はさまざまな効果をもたらしますが、最終的には利益の向上につながります。

 

[図表2]T社の取り組んだSCM
[図表2]T社の取り組んだSCM

 

 

 

東 聖也

株式会社オンザリンクス

代表取締役

 

 

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    ※本連載は、東 聖也氏の著書『WMS(倉庫管理システム)で実現する中小製造業の物流DX』(幻冬舎)より一部を抜粋・再編集したものです。

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