世界中から大絶賛された…世界初の「人工心臓」を作った日本人 (※画像はイメージです/PIXTA)

世界初の人工心臓を作ったのは、阿久津哲造という日本人の心臓外科医でした。それまで、空想小説の産物でしかなかった人工心臓を、彼はどうやって作ったのでしょうか。その前に、そもそも人工心臓とは、どのようなものでしょうか。まず、そこから掘り下げていきましょう。

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人工心臓とは

心臓は人が寝ている間も、定期的に血液を送り出す、ポンプの役目を果たしています。血液は、体の隅々まで酸素や栄養を行きわたらせ、細胞活動で発生した老廃物を回収する、重要な役割を担っています。この重要な役割を血液が果たせるのは、心臓が勢いよく血液を送り出してくれるからです。人工心臓は、この心臓の機能を、代行させるために作られた機械です。世界で最初に、人工心臓の開発が始まったのはアメリカでした。当時、アメリカでは心不全による死者が多かったため、1964年に人工心臓プログラムが発足し、人工心臓の開発がスタートしました。

 

人工心臓は、2つのタイプに分かれます。1つは、心臓の心室部分を除去して、人工心臓を埋め込むもので、「完全置換型人工心臓」と呼ばれます。もう1つは、心臓の左心室から血液を大動脈に送る、「左心補助心臓」です。また、人工心臓は目的によって、2通りに使い分けられます。1つは、人工心臓によって、半永久的に血液を循環させるもので、もう1つは、心臓移植の心臓提供者が見つかるまで、一時的に人工心臓を使うものです。1980年代初め、完全置換型人工心臓が、メディアに取り上げられ脚光を浴びたため、多くの患者がこの人工心臓を体内に埋め込みました。その結果、人工心臓を埋め込んだ患者全員が、脳血栓症を発症してしまうという、最悪の事態に陥ってしまったのです。

 

これ以降、人工心臓を半永久的に使用するのは、リスクが大きいため、心臓移植を待つ間だけ、人工心臓を使う方式にシフトしていきました。このような人工心臓の使い方を、ブリッジ使用と呼びますが、当時は人工心臓を体内に埋め込み、コントローラーやバッテリーなどは、体の外に取り付けていました。しかし、この取り付け部分がかなり大きく、重量もあるため、人工心臓を埋め込むと、外出はほとんどできなくなりました。現在の人工心臓も、バッテリーやコントローラーが外部にあるのは同じですが、ウェストポートに収まるサイズまで、コンパクトになっているので、かなり使いやすくなっています。

世界初の人工心臓

1958年1月、日本人心臓外科医の阿久津哲造が、アメリカのクリーブランドで、人工心臓の動物実験に成功しました。この世界初の人工心臓は、アクツハートと呼ばれ、世界中で絶賛されました。動物実験に成功した阿久津氏は、今度は人間の体に、人工心臓を埋め込むために研究を続けます。そして1981年、阿久津氏が作った人工心臓が、初めて人の体内に埋め込まれました。ブリッジ使用された人工心臓は、心臓移植手術が行われるまで、54時間にわたって、患者の体の中で動き続けました。

 

その後、日本に帰国した阿久津氏は、テルモに招かれ、人工心臓開発の最高責任者兼副社長に就任します。阿久津氏は副社長就任後も、人工心臓の開発を続けました。現在では、心臓に重大な疾患を持つ、多くの患者が人工心臓によって救命されています。空想の世界の産物でしかなかった人工心臓を、アクツハートとして実現させた、阿久津氏の功績は計り知れません。

人に埋め込む人工心臓の課題

動物実験に成功した阿久津氏は、人に埋め込む人工心臓の開発に当たって、3つの問題点を挙げています。それは、人工心臓を作る材料、人工心臓を動かすエネルギーと、その制御法です。阿久津氏は、材料の問題から着手しました。動物実験に使用した人工心臓は、塩化ビニール製でしたが、塩化ビニールには、血液が凝固するという重大な欠陥がありました。これでは、動物実験には使えても、人の体に埋め込むことはできません。阿久津氏は試行錯誤の結果、某タイヤメーカーから提案された、ポリウレタンを採用することにしました。

 

材料が決まると、次の課題は人工心臓に使うエネルギーの問題でした。人工心臓の駆動方法は、空気を送って拍動させる方法のほか、小型モーターや電磁石を使う方法もあります。しかし、どの方法も制御が困難で、開発は暗礁に乗り上げてしまいました。ちょうどその頃、NASA(アメリカ航空宇宙局)から、無償協力の申し出があり、阿久津氏とNASAの共同開発が始まります。NASAの協力を得て、阿久津氏はさまざまなタイプの人工心臓を作りました。そして1962年には、実験動物の生存時間27時間という記録を打ち立てます。

 

それまでの動物実験では、24時間以上生きていた例がなかったので、1日の壁を破ったのは大きな成果でした。やがて、数えきれないほどの実験を経て、人工心臓にはシリコンゴムを使い、空気駆動によって拍動し、制御はNASAによるセミ・オートマチック方式に決まりました。その後も地道な研究を続け、1964年には動物の生存時間を、31時間まで伸ばすことに成功し、人への人工心臓埋め込みにまた1歩近づきました。しかし、人への人工心臓埋め込みのハードルは高く、1958年に初めて動物実験に成功してから、実に23年もの年月がかかったのです。
 

 

 

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1955年宮崎県生まれ。明治学院大学文学部英文学科卒業。システムエンジニア歴25年。フリーライター歴15年。初期の頃は雑誌など紙媒体を中心に、現在はWeb記事を中心に執筆。執筆記事数は7000本を超える。
サブカルチャー、ムック本などのほか、時事ニュースやコラム記事の執筆もある。歴史が好きで、幕末史に独自の見解を持つ。大正時代、昭和初期の歴史にも興味があり、誰も書かなかった近代史を書きたいとの構想がある。
著書:
鹿児島あるある(TOブックス)
勝手に現代風にアレンジしたことわざ辞典(三交社)

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