94歳認知症父も実践!嚥下機能回復「パタカラ体操」の効き目

最近、94歳認知症の父、じーじは嚥下機能が急激に低下してきているという。食事中にむせたり、せき込んだりの回数が多くなり、昼寝をしているときもむせているという。そこで嚥下機能回復の「パタカラ体操」をやった効果は。連載「見つめてひらめく介護のかたち『楽しむ介護』実践日誌」の著者の黒川玲子さんが介護の日々を現場報告する特別編をお届けします。

「パタカラ体操」で咀嚼や嚥下の機能回復

頑張って包丁で小さく切って出しても「でかい」というなら、その「でかい」と言ったおかずをおかずをじーじの目の前でハサミを使って小さく切るのはどうだろう。韓国の焼肉屋さんがやってくれるパターンである。思いついたら即実践。さっそく100円均一に行きハサミを購入した。

 

その日の夕食、包丁で刻まない食事を出すと、「ノドに詰まるから、食わん」といつも通りの返答。

 

そこで、「今、小さく切ってあげるよ」と目の前でチョキチョキ。

 

すると、じーじが

 

「お前は頭がいいな、これならノドにつまりそうもないな、今日は食うか」と一言。この日を境に、じーじはご飯を食べてくれるようになったのである。

 

しかし、やっぱりゲホゲホする。

 

このままでは、誤嚥性肺炎を起こしかねない。そこで、食事の前に嚥下機能回復に役立つと言われている「パタカラ体操」をしてもらうことにした。

 

「じーじ、食事がむせないようになる体操があるのを知ってる?」

「なんだ、そりゃ」

「パタカラ体操だよ」

 

これは「パ」「タ」「カ」「ラ」を発音する体操で、食べる前に行うことで口や舌の動きを良くし、唾液の分泌を促がされ、咀嚼や、嚥下機能の維持、向上に効果があるとされていて、デイサービスや施設では食事の前には必ずと言っていいほど取り入れられているのだ。

 

パタカラ体操をすることで、安心して食事ができるようになるだけでなく、発音がよくなったり、いびきや口臭が改善されたり、さらに若返り効果も期待できるという優れものの体操だ。

 

「お~。デイサービスでやらされているやつか」

 

やらされているのね……と思いつつ。

 

「そうそう。家でもやってみようよ」と言うと、しぶしぶながらOKしてくれたじーじ。

ひとりでやらせるのはかわいそうだと思い。私も一緒にやることにした。

 

「パ」「タ」「カ」「ラ」「パ」「タ」「カ」「ラ」「パ」「タ」「カ」「ラ」

「次はじーじの番だよ」

 

「俺はなぁ、入れ歯がガクガクするからうまくできんのだ」と言いつつも。

 

「パ」「タ」「カ」「ラ」「パ」「タ」「カ」「ラ」「パ」「タ」「カ」「ラ」

 

「上手じゃない」と褒めたら、調子に乗って何回も発音するじーじ。

 

マニュアル通りに舌の先を意識してきちんとやれば効果はあるらしいが、入れ歯をガクガクさせながらなんとなく発音しているだけで効果があるのだろうか? と思った瞬間。

 

「バ」「カ」「タ」「レ」「バ」「カ」「タ」「レ」「バ」「カ」「タ」「レ」

 

に聞こえてくるのであった。

 

 

黒川 玲子
医療福祉接遇インストラクター
東京都福祉サービス評価推進機構評価者

 

 

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    医療福祉接遇インストラクター
    東京都福祉サービス評価推進機構評価者

    埼玉県生まれ。博報堂勤務を経て、埼玉県内の介護事業会社勤務。医療福祉接遇インストラクター、東京都福祉サービス評価推進機構評価者。2001年より成長期の大手介護事業会社において、広告宣伝室室長として、社外向けの広報誌の作成、入居者促進業務に携わる。
    2015年、株式会社ケー・アール・プランニング設立。編集プロダクションとして介護・福祉を専門とした雑誌の編集を行う傍ら、接遇マナーインストラクターとして、介護付有料老人ホームやデイサービス等で介護の現場に即した研修を行っている。

    著者紹介

    連載見つめてひらめく介護のかたち「楽しむ介護」実践日誌

    認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌

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    黒川 玲子

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