(※写真はイメージです/PIXTA)

長年顔すら合わせていない家族ではなく、知人に財産を渡すと、遺言書を書いた丙野さん。しかし「遺留分」を考慮しなければトラブルに発展する可能性が…。行政書士の山田和美氏が解説します。※本連載は、書籍『「きちんとした、もめない遺言書」の書き方・のこし方』(日本実業出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。

「感謝を表すため」のはずが、むしろ負担に…

この場合、甲野弘さんが不動産の4分の1ずつに相当する額をそれぞれ妻と長女に金銭で支払うことができます。しかし、それだけの大金をすぐ用意できる人はそう多くありません。

 

もとの話に立ち返って考えれば、遺言者である定夫さんは、長年お世話になった友人に感謝を表すために財産を渡そうとしていました。にもかかわらず、この遺言書では友人に負担や不安を与えています。果たして友人は、財産をくれた定夫さんに素直に感謝できるでしょうか。

 

遺留分を侵害した遺言書が必ずしも駄目ということではありません。しかし、遺留分という制度をふまえて対策を検討する必要があったのです。

 

具体的には2つの考え方があります。1つは、弘さんに全財産を遺贈するという内容ではなく、妻や長女にも遺留分に相当する分の財産を渡すという内容の遺言書を書いておく方法です。

 

財産を渡したくない相手に財産を相続させる内容の遺言書を作成するのは不服かもしれません。しかし、後から遺留分侵害額請求をされるのであれば、あらかじめ遺留分に配慮した遺言書を作成することで、本当に財産を渡したい相手にトラブルなく財産を渡すことができるのです。

 

もう1つは、遺留分制度があることは理解したうえで、あえて遺留分を侵害した遺言書を作成する方法が考えられます。

 

遺留分は、自動的に発動するものではなく、請求されたら返還すべきもの。そのため、仮に請求されなければ、支払う必要はないのです。

 

本例では、関係はよくないとはいえ、妻とは同居しているわけですから、やはり遺留分侵害額請求をされる可能性が高いでしょう。

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