(※写真はイメージです/PIXTA)

農業を営み、その後不動産賃貸業に転向した父が逝去。4人の子どもたちは生家を離れ、全員遠方で暮らしています。実家にひとり残る母親の生活を守りながら、きょうだい全員が平等に相続し、なおかつ節税も行うことは可能なのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

一次相続の分割は、二次相続を念頭に置いたうえで決定

岡田さんは当初、母が相続する分を決めてから、残りをきょうだい4人で4等分することを考えましたが、安定的な収益が得られている賃貸物件については、母を含めた相続人5人全員の共有にすることを希望していました。

 

「駅前の賃貸物件からは、かなりの収益があるのです。でも、相続人全員で分けないと不公平かなと思いまして…」

 

思案する岡田さんに、筆者はやめておくようアドバイスしました。複数人でひとつの不動産を共有すると、将来的に意思統一が難しくなる可能性があり、争いの原因になりかねません。相続の場では「みんなで共有して家賃を分ければ…」という発言がしばしば聞かれるのですが、当初は問題なくても、相続人たちの子どもの代、孫の代まで考えた場合、共有名義は安易にお勧めできません。

 

そこでまず岡田さんに、今後母親が亡くなったときの最終的な財産の分け方について考えてもらうようにしました。母が亡くなったときの分割方法を前提に、今回の一次相続の分け方を決めるよう提案したのです。

 

次のステップとして、節税のために配偶者の特例を利用し、母の取得割合が50%になるように配分していきます。その際、将来取得する予定の子どもと共有にすることで、二次相続の布石にもなるように調整をすすめました。

 

今回は、亡くなった父親が事前に資産内容を整理していたため、相続人の負担はかなり軽減されたといえます。実は、被相続人がこのように几帳面な対応をしているケースは珍しく、資産内容がよくわからずに相続人たちが四苦八苦するほうが多いのです。

 

そのような背景から、今回は、精神的にも時間にも余裕をもってじっくり検討することができました。一次相続の段階から、最終的な財産の分け方をシミュレーションできたので、将来起こる二次相続でも争いになることは考えにくいでしょう。

 

節税のポイントは、一時相続で配偶者の特例を最大限に利用したことです。配偶者が相続する割合については、子どもが二次相続で取得予定の不動産の共有割合で調整します。最終的な相続人となる子どもと親と共有にすることで、次の相続への布石になるのです。

 

「複数の土地や賃貸物件があっても、家族だけで相談して分割するのはなかなか難しいですね。アドバイスに従って配分したり、買い替えたりすることで、きょうだい全員、ほぼ平等になって安心しました。母はまだまだ元気ですから、これから先、不安なく楽しく過ごしてもらえればと思います」

 

岡田さんの穏やかな表情に、筆者も安堵しました。

 

※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

本記事は、株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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