(※写真はイメージです/PIXTA)

医療法人寿仁会沖縄セントラル病院理事長である大仲良一氏の著書『ひたすら病める人びとのために(上)』より一部を抜粋・再編集し、1988年に著者が確認した、インドにおけるポリオの実情を紹介します。

インドのロータリークラブとの連携…深刻な状況

私たちのインド訪問に際しては、外務省からすでにニューデリーにある日本大使館やユニセフに連絡があり、一方、インド三二〇地区ロータリークラブ、ガバナーのP・C・トーマス氏から主要ロータリークラブの会長に連絡が届いており、労せずして和やかに懇談の機会を持つことができました。

 

ボンベイ空港に深夜到着して、仮眠もそこそこに早朝五時発のインド国内航空による約二時間の空の旅で、最初の活動予定地である、タミールナドウ州コインバトール空港に到着しました。赤茶けた土地からはね返されてくる災暑には、ただただ閉口するばかりでした。

 

国際ロータリークラブ第三二〇地区年次大会を翌日に控え、同大会に出席する関係各国の代表者と面談しました。

 

カナダのパスト・ガバナーであるケネス・C・ホッブス博士、フィリピンの同じくパスト・ガバナーであるサビーノ・サントス博士をはじめ、現地関係のポリオ・プラス要員のメンバーとエレン綜合病院において懇談し、直接ワクチンの投与を始めることにしました。ポリオ・プラスを周知徹底させるためには、現地住民のポリオに対する認識が大切になります。

 

この点に関しては、広報活動が活発に展開されていたため、ポリオに対する教育が比較的浸透していて、当初、案じていたような宗教問題からくる問題点もないこととがわかり、安堵いたしました。

 

私が第一に訪れたエレン綜合病院をはじめ、現地ロータリアンに紹介される病院は、すべて私立病院で、患者の層がやや上層階級の人たちのように見受けられました。彼らは医療費を支払える層の人たちとなります。

 

一方で、医療費が支払えない、さらに下層階級の人たちは、どのように対応されているかという別の角度からも、ポリオについて調査することにしました。

 

下町の、一般大衆が密集する地域の政府立病院や公立病院に、予約なしに飛び込んでみました。

 

突然の外国人の来訪で、各医師は少なからず戸惑っていたようでしたが、私たちの来訪の趣旨を説明したところ、十分に理解し、快く対応してくれました。その結果、これらの公立病院では、ポリオ対策は大切であるという認識はあるものの、この病気のみを選択的に予防推進するわけにはいかないという説明でした。

 

ということは、疾病構造が我が国とは大いに異なり、いまだに小児の死亡率のトップはコレラ、マラリア、百日咳、ハシカなどであり、ポリオについての頻度は少なく、実態でさえ把握することが困難であるということでした。

 

ポリオ以前に深刻な病気が多いということがわかってきたのです。

 

何事も、現地に身を置かなければ何もわからない、ということが改めて痛感できました。

 

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大仲良一

 

沖縄県立糸満高校卒。
1935(昭和10)年沖縄県糸満市生まれ。
1955(昭和30)年日本大学教養学部修了。
1963(昭和38)年久留米大学医学部卒業。
1968(昭和43)年久留米大学医学部大学院卒業。宮崎県立日南病院脳神経外科医長。
1973(昭和48)年沖縄中央脳神経外科院長。
1978(昭和53)年沖縄キリスト教短期大学理事。沖縄セントラル病院病院長。
1994(平成6)年医療法人寿仁会理事長。

※本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『ひたすら病める人びとのために(上)』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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