(※写真はイメージです/PIXTA)

福岡ソフトバンクのエンタメビル「BOSS E・ZO FUKIOKA」、北海道日本ハムの「街づくり」など、各球団がこれまでにない新しい経営戦略に取り組んでいます。12球団の中でも、野球以外のエンターテインメントの分野で、他球団とは異なる特徴的な取組みを行っているのがオリックス・バファローズ。野球とエンタメのコラボが生み出す相乗効果を、オリックスの応援団「BsGirls」を例に見ていきましょう。

音楽番組が「オリックスファンへの入口」になる可能性

その相乗効果は、とてつもないパワーを秘めている。

 

「僕の個人的な夢は『Mステ』に出ること。難しいですけど、そこまでいけば『紅白』もですね。出たらすごくないですか? 夢、あるでしょ? 叶わぬ夢じゃないような気もしていて、どうせやるなら、そこを目指そうぜと。球団の宣伝にもなるじゃないですか?」

 

『Mステ』は、1986年(昭和61年)からテレビ朝日で放送されている音楽番組「ミュージックステーション」で、『紅白』は言わずと知れた大晦日の一大番組、NHKの「紅白歌合戦」のことだ。

 

東の描くシナリオは、こういうことだ。

 

BsGirlsの曲がヒットして、Mステに呼ばれる。

 

当然ながら、話はオリックス・バファローズの説明になる。

 

「ああ、野球の?」となる。

 

紅白ならば、彼女たちの“お供”の形で、吉田正尚や山本由伸らの主力選手がゲスト出演することになるかもしれない。

 

一見すれば、本末転倒に映る。しかし、その順序はどちらでもいいのだ。

 

ワサビが評判になれば、蕎麦の方もぐっと引き立つのだ。

 

「なんなの? 野球で、ダンス&ヴォーカルユニットって何? になるでしょ。こんなのやってるの、プロ野球? オリックス、こんなことやってるの? じゃあ、ちょっと気になるから、行ってみよう、とかになるんです。たぶん、その番組とかを見ながら、同時にネットで調べ出すと思うんですよ。いろんな動画が混じってくる可能性もある。そうするとアクセス数が一気に跳ね上がる。有名になって、メジャーになっていけば、それに対する効果というのは、すごくあると思うんです」

 

「プロ野球×エンタメ」…コラボの余地はまだまだある

2019年(令和元年)からは、BsGirlsのインスタグラムをスタートさせ、若者たちに人気の最大60秒間のショート動画アプリ「TikTok」にも、BsGirlsのシングル全曲を使えるようにもした。

 

そうした演出はエイベックスにすればお手の物だが、一方でプロ野球界の弱い部分でもある。そうしたエンタメのフィールドと野球界のコラボは、さらなる可能性が見いだせるというのが、東のような“エンタメの専門家”の見解でもある。

 

「この子たちの人気が上がれば、いろいろなものが勝手についてくる。だから、人気を上げることを重点に動かしている感じです。もっとお客さん視点で、演出がすごいから、オリックス戦を見に行こうかという動機でもいいと思うんですね」

 

そう語る東は、オリックス以外にも、バスケットボールのBリーグ・大阪エヴェッサの試合演出を手掛けている。「バスケの方は、照明から音響から演出から、すべてやっているんですよ」と笑いながら、スマートフォンの動画を見せてくれた。

 

「バフォッ」。選手入場の演出で、真っ赤な炎が上がるのだ。

 

「ドームもアリーナも同じ“箱”なんです。青天井じゃないから、オリックスでもやろうと思ったらできるんです。僕らの視点から見ると、いろいろできるよねと。お金とか度外視したら、物があれば、いろんなことができると思いますね」

 

京セラドームにしても、年々改装を重ね、観客重視のスタイルに変貌している。

 

それでも、東の目から見ると、もっとエンタメ仕様に変えられる部分があるという。

 

バックスクリーンのビジョンはLEDになった。これだと、ボタン1つで表示をパッと切り替えることができる。

 

しかし、ビジョン横の広告は「看板」のままだ。

 

「例えば、横の広告も全部LEDになったら、広告だって出したいときに出せるじゃないですか。逆に言うと、看板の出し方ももっと大きく出せれば、スポンサー営業もやりやすくなる。

 

どれだけ設備に投資するか、ということにもなるんですけど、演出としてはすごく使い勝手がよくなりますよね。やっぱりライブで貸したりするときに、アーティストのライブでそういうのが使えたりするといいんですよね。

 

天井にも『ムービング』という動くライトがあって、光が回ったり、ライブとかでよくやる演出なんですけど、例えばボタンをポンと押すと、一手にパッと集中したり、暗転させて真っ暗にして、ピッチャーマウンドのところにパッと光をつけるとか、ピンスポットのでっかいライトを持ってこなくても、そういう操作ができる。そうすると、ドームがもっと生かせる。設備がまだ追いついていないのかもしれませんね」

 

福岡ソフトバンク、北海道日本ハム、西武でも、こうした“エンタメ仕様”を想定して、スタジアム内の改善を手掛けている。

 

「プロ野球界は、ルーティンでやられているところがある。でも、僕らには新鮮に見えるところもあるし、まだまだできることがある」と東はいう。

 

プロ野球とエンターテインメント分野の相乗効果は、まだまだ生み出せる余地がある。

 

 

喜瀬 雅則

スポーツライター

 

 

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