※画像はイメージです/PIXTA

被相続人の遺産を特定の団体(個人)に無償で寄付し社会貢献に役立てる遺贈寄付(遺贈寄附)。被相続人の想いが遺されるだけではなく、遺贈寄付は相続税の圧縮効果も。しかし遺贈寄付先とのトラブルに発展するケースも珍しくありません。そこで遺贈寄付の基本と注意点について見ていきましょう。

遺贈寄付先によって「相続税優遇措置」のメリットあり

遺贈寄付をすれば相続税の課税対象が下がるため、節税に繋がるというメリットがあります。

 

そもそも相続税は遺産総額に対して課税されるものではなく、遺産総額から各種控除を差し引いた金額に対して課税されます。遺贈寄付をした財産は控除対象となり、遺産総額から差し引かれるため、相続税の課税対象が下がるということです。

 

あるモデル家族の例を挙げて、シミュレーションしてみましょう。

 

■遺贈寄付あり/なしで相続税総額はどう変わる?

 

 

 

遺贈寄付を200万円しているので財産分与は少なくなりますが、遺贈寄付ありの場合と遺贈寄付なしの場合では、相続税総額に27万円(1人9万円)の差額が生じます。これが遺贈寄付による相続税の節税効果というわけです。

 

今回は相続財産がすべて現金で相続人が3人と仮定していますが、相続税は財産目録や相続人の数によって、計算方法や基礎控除額も大きく変わってきます。

 

■遺贈寄付先によって、相続税の優遇措置が変わる

遺贈寄付をして相続税の節税をするためには、遺贈寄付先を「寄付金控除が受けられる団体」にすることが必須です。遺贈寄付先は1ヵ所だけではなく複数の団体に分けてもOK、被相続人による遺贈寄付でも、相続人による遺贈寄付でも良いでしょう。

 

ただし、相続税の優遇措置が受けられない団体に遺贈寄付をしても、相続税の節税効果はないので注意してください。

 

相続税の寄付金控除が受けられる団体は、以下の通りとなります。

 

寄付金控除が受けられる団体

・国や地方公共団体

・認定NPO法人

・特定公益増進法人(公益社団・財団法人・社会福祉法人・学校法人など)

 

ちなみに、これらの遺贈寄付先に遺贈寄付をすれば、確定申告の際に所得税控除も受けられます(所得のある納税者に限る)。領収書を必ず保管しておき、確定申告の際に寄付した旨を記載しましょう。

「遺贈寄付」の3つの注意点

遺贈寄付は被相続人の遺産の一部もしくはすべてで社会貢献ができ、さらに相続税の節税効果というメリットも。ただし遺贈寄付には注意点もあるので覚えておきましょう。

 

■現物不動産は清算型遺贈で

遺贈寄付する財産が土地や建物などの不動産の場合は、必ず清算型遺贈にしてください。

 

この清算型遺贈というのは「現物不動産を現金化」し、税金や諸経費を差し引いた額を遺贈することです。仮に現物不動産のままで遺贈寄付をすると、税制上「時価で譲渡した」とみなされ、値上がり益に「みなし譲渡所得課税」が課税されることがあります。

 

このみなし譲渡所得課税は、法定相続人に納税の義務があります。遺贈寄付によって現物不動産はすでに相続人の財産ではないのに、税金を支払う義務は相続人に発生する……将来的にトラブルに発展するのは、目に見えています。

 

多くの遺贈寄付先からはトラブル回避のために、不動産は清算型遺贈にするよう案内があると思います。被相続人の想いを残してトラブルを回避するためにも、不動産を遺贈寄付する場合は「清算型遺贈」を選択しましょう。

 

■遺贈寄付は遺留分の配慮を忘れない

被相続人の遺言による遺贈寄付で、直系卑属の相続人(配偶者・子供・親)がいる場合、遺留分に十分配慮しましょう。

 

この遺留分というのは直系卑属の法定相続人が、最低限相続できる割合のことです。仮に遺留分に配慮しないで遺贈寄付をし、相続発生後に法定相続人が遺留分を主張した場合、法定相続人と遺贈寄付先で裁判沙汰になることも……遺贈寄付先は寄付財産を手放さなくてはならず、被相続人の想いを遺すこともできません。

 

■遺贈寄付は「公正証書遺言」がおすすめ

被相続人の遺言によって遺贈寄附をする場合、多くの場合は「遺言書」に遺贈寄付先や財産を記載するかと思います。

 

遺言書にはいくつか形式がありますが、遺贈寄付をするなら「公正証書遺言」を選択することをおすすめします。というのも自筆遺言書は法的に無効になる可能性があり、被相続人が死亡した後に見つけられない可能性もあります。公正証書遺言であれば法的効力があるため、被相続人の想いを確実に伝えることができます。

 

■まとめ

遺贈寄付は素人だけで判断すると思わぬトラブルに発展するケースもあり、被相続人の想いを遺せないこともあります。相談は任意ではありますが、遺贈寄付を考えているなら、専門家や遺贈寄付先に相談をおすすめします。

 

また遺贈寄付には相続税の節税になるというメリットもありますが、相続税の課税対象は遺産の内容や被相続人の人数で大きく変わります。遺贈寄付を活用した相続税対策を考えているなら、必ず相続専門の税理士に相談ください。

 

 

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    本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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