(※写真はイメージです/PIXTA)

厚労省によると、企業におけるメンタルヘルス対策では、4つのケアが計画的かつ継続的に行われることが重要とされています。4つとは①従業員本人による「セルフケア」、②管理監督者の「ラインによるケア」、③産業医などの「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」、④専門知識を有する各種外部機関を利用した「事業場外資源によるケア」のこと。なぜこれだけ手厚いアプローチが必要なのか、実際のメンタル不調の事例から見ていきましょう。セイルズ産業医事務所の富田崇由医師が解説します。

うつ病患者は「真面目・平和主義・責任感が強い」傾向

この時期から「自分は部下に迷惑をかけている、自分がしっかりしないから迷惑をかける、この職場には自分は不要な存在だ」と罪悪感ももつようになりました。徐々に欠勤するようにもなりましたが、上司には精神状態について相談することはなかったそうです。

 

さらに昇格から6ヵ月が経過したある日、内科で処方された抗不安薬を過量服薬して自殺を図ってしまいました。そのときは、家族が早く発見して救急搬送され、早く処置をできたので、重い合併症を残すことなくも数日後に回復できました。

 

しかし、精神神経科医師の診察を受けると、重度のうつ病であるとの診断があり、そのまま精神科病棟へ移り、約3ヵ月間の治療を受けることになりました。

 

このケースのように真面目で責任感が強く、争いごとを好まない性格はうつ病の患者に多く見られる傾向があります。そのような従業員に対しては、より慎重なストレスケアが重要になってきます。

 

組織改革で社内に「リストラの雰囲気」が広まり…

大手メーカー関連の地域販売会社で営業を担当していた57歳の男性、Bさんのケースです。Bさんの会社は、バブル崩壊後の不景気の際に生き残りをかけて、近隣県の兄弟会社と順次合併を繰り返し、最終的に関西圏を代表する販売会社となりました。

 

このときに、社内では組織変更とリストラが進行し、社内には「仕事のできない者は辞めさせられる」との雰囲気が広がりました。また、組織改革と併せて業務効率化の一環として、文書の完全デジタル化を目指し、業務日報もE-mailで送るよう指示されていました。

 

Bさんは、当初は県下のある地域を任されていた営業課長でした。しかし、合併を繰り返す間に、より大きな営業組織に編入されたため、課長から次席に降格させられました。Bさんは元来、真面目な性格でした。

 

始業後は前日に得意先から受けた仕事の見積もりやチェック表を会社でつくり、11時頃から取引先を回り、新たな仕事を確保してきます。忙しいので、昼食はパンやおにぎりを運転しながら食べる毎日です。

 

夕方に会社に戻ると、日報を書いていましたが、18時頃からは、再び近くの得意先を20時頃まで回っていました。

 

年齢的な面もあり、パソコン作業が効率的に進まず、帰宅してからも自宅のパソコンで仕事をしていたそうです。その結果、平均睡眠時間は3~4時間になっていました。土日に出勤したり、レポートの作成のために徹夜することも少なくありませんでした。

 

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    ※本連載は、富田崇由氏の著書『なぜ小規模事業者こそ産業医が必要なのか』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

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