ジャクソンホール会議後、一時110円割れ…国際金融アナリストが「米ドル/円」今後の展開を考察

8/31~9/6の「FX投資戦略ポイント」

ジャクソンホール会議後、一時110円割れ…国際金融アナリストが「米ドル/円」今後の展開を考察
(※画像はイメージです/PIXTA)

ジャクソンホール会議におけるパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の発言により、先週、米金利は低下し、米ドル/円も110円割れとなりました。今回は、FX開始直後から第一線で活動している、マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏が米金利、米ドル/円の今後の展開を考察します。

 

米2年債利回りは、リーマン・ショック後の金融緩和見直し局面においては、2014年1月からのテーパリング開始に向け、ゼロ金利政策の上限である0.25%を大きく上回る動きに向かいました(図表4参照)。これは、金融緩和見直しの具体化、さらに政策金利引き上げを織り込む形での米2年債利回り上昇だったと考えられます。

 

出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成
[図表4]FFレートと米2年債利回りのスプレッド (2013年~) 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

 

ジャクソンホール会議でのパウエル発言終了後、米2年債利回りは0.21%程度での推移となっており、ゼロ金利政策の上限である0.25%を下回った水準での推移となっていますが、リーマン・ショック後の経験などを参考にすると、米2年債利回りのさらなる低下は限られ、今後は0.25%以上へと上昇する可能性が高いのではないでしょうか。

 

すでに述べたように、米ドル/円は最近にかけて2ヵ月近く、109~110円半ば中心のレンジで小動きが続いてきました。小動きが長く続くとエネルギーが溜まり、小動き終了によりエネルギーの発散で一方向へ大きく動きやすくなります。

 

では米ドル/円は109円割れに向かうか、それとも110円半ばを上回る動きに向かうのか。これまで見てきたことからすると、米2年債利回りの上昇再燃で、レンジの上放れを目指す可能性が高いでしょう。

テーパリング開始のタイミングを予測する

パウエル議長に限りませんが、最近にかけて、FOMCメンバーから早期のテーパリングを支持する意見が相次いでいます。これは、客観データの結果からすると当然のことなのかもしれません。

 

たとえば、物価の番人であるFRBがとくに注意を払うインフレ指標の一つ、PCEコアデフレーターの7月分が27日発表されましたが、前年比の伸び率は3.6%でした(図表5参照)。ちなみに、リーマン・ショック後に2014年1月からテーパリングを始める際の同数値は1.1~1.2%程度だったので、比べると、足元の物価上昇率がいかに大きいかがわかります。

 

出所:マネックス証券「経済指標カレンダー」
[図表5]PCEコアデフレーターの前年比伸び率 (2013年~) 出所:マネックス証券「経済指標カレンダー」

 

また著者は、米金融政策と米失業率の関係について、2014年1月からテーパリングが始まったのが、失業率が過去10年の平均値(10年MA)を下回ってきたタイミングだったことに注目してきました。

 

足元の失業率10年MA5.9%に対し、7月分は5.4%と大きく下回ってきました(図表6参照)。さらに、9月3日発表予定の8月失業率は5.2%へ一段の低下が予想されています。

 

出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成
[図表6]FFレートと米失業率の関係 (2010年~) 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

 

以上のように見ると、いくつかの客観データは、リーマン・ショック後にテーパリングを開始した際よりも、金融緩和見直しの必要性を強く示すものになっています。その意味では、今後FOMCは、9月22日、11月3日、12月15日に予定されていますが、9月FOMCでテーパリング開始を正式決定し、10月以降に開始する可能性も十分あるのではないでしょうか。米2年債利回りなど米金利の上昇再燃が、米ドル高・円安再燃の手掛かりとして注目されそうです。

 

 

吉田恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

 

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

 

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