(※写真はイメージです/PIXTA)

新型コロナウイルスの第4波は、ベトナムの不動産市場にも影を落としています。郊外の戸建てやマンションが注目される一方、新規感染者の約8割を占める南部地域と感染者の少ない北部地域では市場の動きに差が現れてきました。また、全体的な不動産価格の上昇にも、一筋縄ではいかない複雑な事情が潜んでいます。南部ホーチミンを拠点とし、不動産ビジネスを展開する徳嶺勝信氏が解説します。

ハノイ市とホーチミン市の不動産価格は「上昇傾向」

2019年に入り、北部・南部地域それぞれにおけるプロジェクト許可の厳粛化に伴い、許認可申請に時間を要するとともに、新規供給物件が減少していることから、販売価格の高止まりが続いています。供給が多いのはハイクラス、ハイミドルクラスの物件で、ミドルクラス、ローミドルクラスは減少しています。さらに、2020年初頭からの感染流行により、市場に供給される新規物件がさらに減少するなど、不動産市場にも複雑な動きが見られます。

 

現在に至るまで、ハノイ市とホーチミン市の不動産価格は、感染流行の影響にもかかわらず、継続的に上昇しています。建設省第2四半期の不動産市場レポートによると、ハノイ市とホーチミン市のマンション平均価格は第1四半期と比較して5~7%上昇しており、前年の第4四半期よりも5~10%上昇。反面、消費(購入)は減少しており、供給率の少なさにより価格上昇が微妙に続いている状況です。

ハノイ市郊外には「ブランド住宅地域」が出現

ハノイ市場では、高層ビル開発が中心地の外側にも進展しています。かつては、中心部から離れることで生じる生活環境の変化に、多くの人が不安を感じていましたが、現在は交通インフラ、公共施設、商業施設等を含めた大都市開発が広く行われていることから、中心地から離れることへの抵抗はなくなっています。中心地以外での生活環境が整うことで、ハノイ市場は多くのブランド住宅地域を保有することになりました。

 

郊外でのブランド住宅開発は、中心地より土地価格を抑えた分、住宅の質を向上させることができました。これはブランド住宅の品質を満たすだけでなく、多くの投資家(開発会社)が自社製品の利益を向上させ、今後の新規住宅供給を行うための前向きな動きとなっています。そして、新しいプロジェクトのマンション価格も絶えず上昇を続けています。プロジェクトの質の向上と、周辺のインフラ整備の充実の相乗効果で、価格上昇にいい影響を与えています。

 

すべてのプロジェクトが価格上昇を続けているわけではありませんが、実際に、より高品質なプロジェクトは市場で高い価値を生み出します。ホーチミン市よりまだ手頃な価格帯のところも多く、割安感もあるため、価格上昇は今後も続いて行きそうです。

ホーチミン市は、在宅勤務拡大が今後の市場に影響か

ホーチミン市で新規供給されるマンションの販売価格は、2020年に比較して引き続き上昇すると予測されていますが、市場の在庫調整の関係で新規供給数が限られており、急激な増加はありません。

 

すべてのマンション販売分野における2021年の主要な提示価格は、前年と比較して1%から4%の価格上昇となっており、とくにラグジュアリークラス(超高級マンション)は高値で販売されている1区のブランドマンション(『第51回ベトナム不動産「Grand Marina Saigonプロジェクト」に注目』参照)の予定販売価格(1万2000米ドル/m2~1万6000米ドル/m2)の影響もあり、2022年までに6%上昇する見込みです。

 

さらに、コロナウイルスの蔓延で在宅での業務が拡大し、在宅勤務モデルが新しいトレンドになっています。これにより、都市部中心地だけではなく、自然環境豊かな郊外に、インフラ整備の充実した広いマンションが増えています。感染終息後のマンション市場は新しい展開を迎える可能性があります。

 

また、CBREのレポートによると、主要市場のマンション平均販売価格はすべての分野で上昇し、前年同期比16.5%増の2260米ドル/m2(付加価値税を除く)に達し、全体的な供給不足により、平均価格水準も大幅に上昇しています。なかでもラグジュアリークラス(超高級)とミッドエンドクラス(中級)は、昨年の同時期にくらべ、それぞれ 9.2%と8.3%の価格上昇を記録しました。

 

逆に、ニーズが中途半端だったハイクラス(高級)と、需要は大きいけれどもほぼ供給がなかったローエンドクラス(低層)の四半期調査では、価格の上昇はわずかで、昨年の同時期にくらべ、それぞれ0.4%と1.6%となりました。予測によると、2021年の年末まで供給されるホーチミン市のマンション数は、約1万7000~1万8000戸と予想されています。

 

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