ケアマネは自分のほかに30人担当している
しかし、利用者・介護者はそこまで考えが及びません。自分たちにとっての担当ケアマネはひとり。ケアマネがほかに30人前後を担当していることなど知らず、わが家のケアに集中していると思うわけです。
だから、しばらく連絡が入らなかったり、なかなか訪問に来なかったりすると、手を抜いているんじゃないかと考えるようになる。それが不満につながり、良好な人間関係を築くことができなくなるわけです。
利用者・介護者とケアマネの構図は、1対1ではなく、約30対1と知っておいたほうがいい。といって、ケアマネが自分たちに注ぐ労力や知恵が30分の1かというと、それも違う。ケアマネは、いま目の前で対面している利用者・介護者には集中して対応し、もてる力の100%を出そうとしているわけです。
この構図は、小学校や中学校の担任の先生をイメージするとわかりやすいでしょう。担当する人数は30人から40人とほぼ同じ。そのなかには、やんちゃな子が数人はいて、担任の意識はおもにそこに向かいます。しかし、手のかからない生徒を無視しているわけではない。そのなかの生徒に異変が生じたら、そちらを最優先で心配するわけです。そのあたりは、ほかの生徒もわかっていて、ふだん目をかけてもらえなくても不満は感じません(えこひいきのようなケースは別ですが)。
ケアマネもそのように対応しているといえます。担当する約30人のうち、つねに注視することが必要な人には、より多くの時間と意識を注ぎますが、それ以外は見守るレベルで済ませる。しかし、それらの利用者にも何かが起これば、そちらに集中するという臨機応変の対応をしているわけです。
ケアマネは利用者・介護者にそうした事情を話すことはありませんが、「ウチは多くのなかの1軒だ」と知っていれば、余計な負担をかけないよう配慮するようにもなるもの。また、担当してくれていることに感謝し、来訪時には「ありがとうございます」のひと声をかける気にもなります。ケアマネのほうも、そんなことをいってくれる人は少ないですから、好感をもち、気持ちを込めて仕事をすることになるのです。
相沢 光一
フリーライター