「患者は、尊厳のうちに死ぬ権利をもっている」の深すぎる意味 (※画像はイメージです/PIXTA)

ジュネーブ宣言とは、医療従事者のあるべき姿が明文化されたもので、1948年に開催された第2回世界医師会で採択されました。これは、紀元前400年頃に作られた、ギリシアの医師ヒポクラテスの誓いを基本にしたもので、第二次世界大戦のナチス政権下で行われた、非人道的な実験の反省として宣言されたものです。ジュネーブ宣言と、ヒポクラテスについて詳しく見てみましょう。

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ヒポクラテスとは

ヒポクラテスは、紀元前460年頃~紀元前370年頃の古代ギリシャの医師です。医学は科学的なものとするヒポクラテスは、当時流行していた迷信や呪術的要素を排して、科学的な医学の構築を目指します。ヒポクラテスはさまざまな治療法を考案し、科学に裏付けされた医学を発展させて、世界で初めて医師という職業を確立させました。このことから、ヒポクラテスは「医学の父」と呼ばれています。

 

ヒポクラテスの医学は、人体に備わる自然治癒力を引き出すもので、現代のエコロジーに通じるものがあります。人間には4つの体液があり、そのバランスが崩れると病気になると、ヒポクラテスは考えていました。

 

ちなみに、ヒポクラテスは世界で初めて、はしかを治した医師としても知られています。また、当時流行していたペストの原因が、不衛生な環境にあると主張し、人間の住環境を清潔にすることで防げると説きました。まだ細菌やウイルスに関する知識がなかった当時、ヒポクラテスはすでに、感染症や伝染病を予防する方法を知っていたのです。ヒポクラテスはまさに、時代を超越した医師であったと言えるでしょう。だから、彼が著したヒポクラテスの宣言も、時代を超えて現代にも生きているのです。

ジュネーブ宣言とは

ジュネーブ宣言は、古代ギリシアの医師ヒポクラテスの誓いを、現代風にレンジしたものです。そのため、ジュネーブ宣言は時代に合うように、制定後何度も改定されています。宣言の内容は、医師として患者の治療に当たる際の、心構えが記されています。ジュネーブ宣言を一部抜粋すると、以下のような内容になります。

 

・人類への奉仕に自分の人生を捧げることを厳粛に誓う。

・知り得た患者の秘密を、たとえその死後においても尊重する。

・人命を最大限に尊重する。

・たとえ脅迫の下であっても、人権や国民の自由を犯すために、自分の医学的知識を使用することはない。

 

患者の治療に当たる医師の、並々ならぬ覚悟が伝わってくるような、重みのある言葉です。アメリカの医学部に在籍するほとんどの学生は、卒業するまでに、ヒポクラテスの誓いやジュネーブ宣言を、暗記するまで覚えると言います。日本の医学部では、そこまで徹底して覚えることはしませんから、日本とアメリカの、医学教育の違いを感じさせるエピソードです。

 

ヒポクラテスの誓いやジュネーブ宣言は、医療従事者としてのあるべき姿をしめしているので、医療従事者1人1人がしっかりと、心に刻むべきものと言えるでしょう。

 

ジュネーブ宣言は、幾度か改定されていますが、最後に改訂された2017年版では、患者の自主尊重原則、自己決定権など、インフォームド・コンセントに関する内容が、しっかりと盛り込まれています。また、時代に合わせて、ウェルビーイングという表現も使われています。ウェルビーイングとは何なのか、次にご紹介しましょう。

ウェルビーイングとは

ウェルビーイングとは、患者が身体的、精神的、社会的に、良好な状態にあることを指します。日本では「幸福」と訳されることが多いのですが、幸福という言葉では、ウェルビーイングの概念を、すべて伝えることはできません。

 

世界保健機関(WHO)憲章の前文には、「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態(well-being)にあること」と書かれています。身体的、精神的、社会的にすべてが満たされた状態。これがウェルビーイングなのです。

 

身体的、精神的、社会的に満たされた人は、最上の幸福を得られるので、ジュネーブ宣言の最新版では、単に患者の病気を治療するだけでなく、さらに高い境地を目指していることがわかります。

ジュネーブ宣言後の歩み

ジュネーブ宣言は、医療従事者に医療の倫理を問うものです。ナチスの非人道的な仕打ちを、反省するところからスタートしたジュネーブ宣言は、1947年に採択された、「ニュールンベルグ倫理綱領」から始まります。

 

そして1948年にジュネーブ宣言が採択されましたが、その基本となったのは「ヒポクラテスの誓い」でした。また、同年には国連総会の場で、「世界人権宣言」も採択されています。大戦中の非人道的な大罪を、二度と繰り返さないために、世界中の医療関係者が一致団結して作り上げたのが、ジュネーブ宣言なのです。

 

このように、ジュネーブ宣言を後押しするような形で、世界人権宣言が採択され、人権を尊重する新たな世界が始まったのです。さらに1957年には、インフォームド・コンセントという言葉が登場しました。その概念は改定を重ねるごとに充実し、1970年代に入ると確固たるものになりました。

 

これ以降、患者の立場を尊重する気運はさらに高まり、第35回世界医師会総会で採択された「リスボン宣言」には、「患者は、尊厳のうちに死ぬ権利をもっている」という、尊厳死を示唆する内容も盛り込まれています。ヒポクラテスの誓いに端を発したジュネーブ宣言は、今後も改定を繰り返しながら、人類の未来を示唆する道しるべとなるでしょう。
 

 

 

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1955年宮崎県生まれ。明治学院大学文学部英文学科卒業。システムエンジニア歴25年。フリーライター歴15年。初期の頃は雑誌など紙媒体を中心に、現在はWeb記事を中心に執筆。執筆記事数は7000本を超える。
サブカルチャー、ムック本などのほか、時事ニュースやコラム記事の執筆もある。歴史が好きで、幕末史に独自の見解を持つ。大正時代、昭和初期の歴史にも興味があり、誰も書かなかった近代史を書きたいとの構想がある。
著書:
鹿児島あるある(TOブックス)
勝手に現代風にアレンジしたことわざ辞典(三交社)

著者紹介

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