(写真はイメージです/PIXTA)

相続を巡るトラブルは尽きないもの。家族や親族の話し合いでなんとかなる……わけもなく、岡野雄志税理士事務所のもとには、様々な相談が届きます。今回は、父親の通夜の晩に起きた相続トラブルについて、税理士の岡野雄志氏が解説します。※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

無税で親からお金をもらう方法はあるのか?

では、金利を払ってでも親から借金したほうがいいのか、贈与税を納める覚悟で贈与を受けたほうがいいのか。金額にもよりますが、ひとつのヒントとして例を挙げれば、贈与税には非課税枠を利用できる特例があります。

 

例えば、その年の1月1日から12月31日までに贈与された額からは、110万円の基礎控除額を差し引けます。これを「暦年課税」といい、父母や祖父母などの直系尊属から平成27(2015)年1月1日以降に財産を贈与された場合、受贈者が20歳以上なら「特例税率」が適用できます[図表1]。

 

[図表1]「暦年課税」の早見表<br />
出典:国税庁『令和2年中に親族から贈与を受けた方はまずはこちらをご覧ください』
[図表1]「暦年課税」の早見表
出典:国税庁『令和2年中に親族から贈与を受けた方はまずはこちらをご覧ください』

 

[図表1]のように、基礎控除後の暦年課税額が1000万円を超えるようであれば、税率も上がりますが、控除できる額も大きくなります。

 

また、富裕層の生前贈与によく利用されるのが「相続時精算課税」制度です。受贈者が2500万円まで贈与税を納めずに贈与が受けられ、贈与者が亡くなって相続が発生したら、受贈財産と相続財産の合計価額から相続税額を計算し、相続税を一括して納税する制度です。ただし、「暦年課税」と併用はできません。

 

また、直系尊属からの贈与には、以下のような非課税制度も利用できます。

 

◎直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税制度(期限:令和3〔2021〕年12月31日)
◎直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税制度(期限:令和5〔2023〕年3月31日)
◎直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税制度(期限:令和5〔2023〕年3月31日)

 

実は、Rさんの次男は、数年前に事業を始めるにあたり、ある資格を取得するため専門学校に通わなければなりませんでした。しかし、当時、次男にはその入学費と授業料を払う充分な蓄えがなかったため、父親に相談したところ、父親がすべて支払ってくれたというのです。

 

これは「都度贈与」といって、親子や兄弟が家族のために生活や教育に必要な資金を支払う場合は、贈与税の対象にはなりません。ただし、その資金を預貯金など、別の目的に使ってしまうと、贈与税の課税対象になってしまいます。

 

不安そうにご相談に見えたRさん親子でしたが、当税理士事務所の説明にホッと胸を撫で下ろしていらっしゃいました。ご主人は遺言書も用意されていたので、あとは長男ともよく話し合って、相続税の申告手続きを無事終えるだけです。

※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

岡野 雄志

岡野雄志税理士事務所

 

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