(※写真はイメージです/PIXTA)

今回の東京オリンピックで、トヨタ自動車が「日本国内におけるオリンピック用TVCMを中止する」という衝撃の発表をしました。五輪スポンサー企業として10年間で2000億円も投資してきたトヨタが、特に宣伝効果が高いとされるTVCMの中止を決めたのは、一体なぜなのでしょうか。中小企業の経営支援を幅広く行う筆者が、最近のマーケティングや広告戦略の変化を踏まえて考察します。

各メディアのメリットを活かす「したたかなサイクル」

もう少し詳しくトヨタのトリプルメディア戦略について見ていきましょう。

 

一般的なオウンドメディアの欠点は、十分な宣伝効果を生み出すまでには一定の時間がかかる点です。これをYouTubeで例えるなら、チャンネル登録者数を増やす作業に時間がかかるイメージです。そこでトヨタは、トヨタイムズを早期に伝達するために、ペイドメディアであるTVCMのメリットを活用しオウンドメディアを宣伝していました。

 

ペイドメディアのTVCMでトヨタイムズを宣伝し、早期に親和性の高い顧客を囲い込み、オウンドメディアであるトヨタイムズでトヨタのコアなファンを育成します。そして、ファンはアーンドメディアでトヨタについて発信する。こういったサイクルでトリプルメディアを活用しているように思います。

 

それぞれのメディアを独立した形で展開するのではなく、トリプルメディアのメリットを最大限に活かし、相乗効果を生み出しながら、ペイドメディアから他のメディアへの移行を行っています。2019年にトヨタイムズ配信開始後、2年で登録者は18万人にのぼります。コンテンツによっては、300万回再生された動画もあり、コアなファンの育成とブランド確立に貢献しています。

 

このように、企業が自らメディアを運営し、消費者起点で商品・サービスの認知拡大を図る手法が今後ますます拡大するとともに、TVCMの地位下落が進むようにも考えられます。

 

もし、メディアを取り巻く環境が20年前から変わらなければ、トヨタは今回同様にTVCMを中止したでしょうか? 筆者は、メディアや広告を取り巻く環境の変化が、トヨタの今回の決断を後押ししたのではないかと推察します。

 

今回はトヨタ自動車のオリンピック用TVCM中止から、メディア戦略について言及しました。しかし、メディア戦略の変革はすでに始まっており、今回のケースはその一部が表面化しただけです。

 

TVCM、雑誌、新聞といったペイドメディアが衰退しているからと、ただ割合を減らせばいいだけでなく、意図をもって段階的に切り替える等、自社にあった適切なメディアの組み合わせ(メディアミックス)を考える必要があると思います。TVCMに限らず、経営者の皆様が広告戦略を考える際には、過去の常識に捉われず、最新動向にアンテナを張って、自社にあった選択を検討するきっかけになれば幸いです。

 

 

黒谷 大介

MASTコンサルティング株式会社 パートナー、中小企業診断士

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