「話し合っても私の言うことを聞いてもらえなかったときはどうしたらいいの?」
すると、今度はお母さんが口を開きました。
「いつでもどこでも、みんながAちゃんの言うことを聞いてくれるわけではないということはわかるよね?」
「うん。でも、ダメって言われると悲しいの」
Aちゃんの気持ちを受けて、お母さんが慎重に考えながら話します。
「そっか、確かに、自分の言うことを聞いてもらえなくて『ダメ』って言われるのは悲しいね。でも、それって、Aちゃんのことを『ダメ』って言ってるんじゃなくて、ママとAちゃんの考え方が違うっていうことなんじゃないかな?」
考え方が違うのではというお母さんの言葉に、Aちゃんは思案します。
「考え方が違う……。ママが『ダメ』って言うときに何を考えているかなんて、わかんないよ。ママが『ダメ』って言うだけじゃなくて、ちゃんと説明してくれたらわかるかも」
そう言われてみると、私も言葉が足りなかったかもしれないと反省するお母さん。二人の対話を聞いていたお父さんが口を開きました。
「それはママにとっても同じなんじゃないかな? Aちゃんが自分の考えを説明せずに泣いてばかりだと、ママにもAちゃんの考えがわからないと思うよ」
お父さんの言葉を聞いて、お母さんにアイデアがひらめきました。
「それなら、お互いの考えが違うときには、きちんと言葉で説明し合うというのはどう?」
お父さんも賛成しました。
「いいね。そうすればAちゃんが泣かなくてもAちゃんの考えていることが伝わるし、ママの考えていることもわかるね」
でも、Aちゃんはまだ不服そうです。
「うーん、だけど、ママの考えがわかっても、私がママの考えがイヤなときにはどうしたらいいの?」
食い下がるAちゃん。お父さんも知恵をしぼります。
「そうだねぇ。お互いが納得できるように解決策を話し合うのがいいんじゃないかな。Aちゃんはイヤなことがあっても、泣かないで話し合うことはできそう?」
「できると思う」
「じゃあ、泣いたらその話は聞いてもらえない、というルールでいいかな」
「うん、いいよ」
Aちゃんは納得しました。ところが、お母さんがまだ思案顔です。
「Aちゃんが泣かないでいてくれて、ちゃんと話せたとしても、いつまでたってもお互いが納得できなかったら、どうしたらいいんだろう?」
お母さんの問いに、みんなは考え込んでしまいました。やがて、お父さんがアイデアをひねり出します。