大切なのは自分は何のために生きるのかという問い

現代は知識社会と呼ばれます。「マネジメントの父」と讃えられるピーター・ドラッカーが知識社会に求められる人材像を「ナレッジ・ワーカー(知識労働者)」と呼んだように、私たちの社会は、もはやどのような仕事も知識労働の要素が強くなっています。

 

知識労働には成長や自己実現という要素があらかじめ組み込まれており、日々進歩しているという実感を抱きながら仕事をすることになります。知識労働に従事するものは、進歩が実感できなければ意欲が出ません。

 

しかし、第1領域での仕事には定年という〝時限爆弾〞がセットされており、そのときを過ぎるとぽっかりとした空白の時間が出現します。このとき、第2領域を育ててこなかった人は空しさを味わうことになります。そこから他の分野に進出しようとしても、知識や経験がないためうまくいきません。そのため、若いときから第2領域を育てていくことが大切なのです。いわば、1本足ではなく、2本足で進む生き方です。今風にいえば「二刀流」です。

 

私にとって知研での活動は、まさに第2領域に属するものであり、そこで積み上げた学習歴や経験歴は、私のキャリアにとって重要な役割を果たすことになりました。

 

キャリアは「仕事歴を中心とした学習歴、経験歴の総体」であるとしても、50〜65歳の壮年期と65〜80歳の実年期では、当然、その構成に違いが出てきます。

 

壮年期と実年期の境目の65歳は、どういう年齢なのでしょうか。厚生労働省の調査によると、企業規模や業種にもよりますが、60歳定年を定めている企業割合は平均約80%となっていますが(65歳以上17.8%)、65歳まで雇用を確保している企業の割合は99.8%にも上ります。

 

高年齢者雇用安定法の改正により、2025年には「65歳定年」が全企業に適用される見込みです。

 

一方、65歳という年齢は、企業に勤めるビジネスパーソンの場合、現在の日本では実質的に年金の受給開始時期を意味します。

 

65歳になっても、実年期に向け、壮年期の延長線上で「公」の仕事を続ける道もあります。壮年期とは違う仕事を始めてもいいし、社会活動や地域活動などを通じて、壮年期とは違う新たな「公」の世界に入っていくのもいいでしょう。

 

また、「公」の部分を縮小する、あるいは「公」から離れるなどして、「個」の領域や「私」の領域で学習歴や経験歴を積み上げていくのもいいでしょう。

 

山を登って、頂上に立ったと思ったら、その山に連なるもっと高い山が見えてくることがあります。尾根伝いにその山に挑戦するのもいい。いったん下山して、別の峰に登るのもいい。それは人それぞれです。

 

いずれにしろ、大切なのは、自分は何のために生きるのかというテーマを自覚するライフコンシャスな生き方です。人生100年時代にあって、65歳でリタイアし、残る35年は余生として暮らすなどという生き方はありえません。

 

ライフワークとは、生涯をかけて、人生のテーマを持って続けることがらであるとすれば、25歳から80歳までの青年期、壮年期、実年期は「公」に重点を置いた生き方になる。ただ、それぞれ仕事歴、学習歴、経験歴の構成に違いが出るでしょう。しかし、キャリアは「青年期・壮年期・実年期」の3期にわたると考えるべきなのです。

 

青年期と壮年期は、「公」の領域が多くを占める点では共通していても、仕事歴も、学習歴も、経験歴もそれぞれ量的にも質的にも異なります。その異なり方はこれから本書を通じて明らかにしていくことになるでしょう。

 

 

久恒 啓一

多摩大学大学院客員教授・宮城大学名誉教授・多摩大学名誉教授

 

 

※本連載は、久恒 啓一氏の著書『50歳からの人生戦略は「図」で考える』(プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです。

50歳からの人生戦略は「図」で考える

50歳からの人生戦略は「図」で考える

久恒 啓一

プレジデント社

「人生鳥瞰図」で仕事も人生もうまくいく! 大人のためのキャリアデザインの教科書。 私は日本人の「アタマの革命(図解)」と「ココロの革命(遅咲きの人物伝)」の二つをライフワークとしている──。 こう語るのは、…

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