写真:スコピスト(手術中のカメラ持ち)としての役割を担うNP

医師の数に対して患者数が増えすぎると、診療が行き届かないという事態が起きる。重篤な症状を抱えた患者であれば、危機的状況となる。そんな現場での活躍が期待されるのが、「NP(Nurse Practitioner)」だ。いったいどれほどの範囲での対応が可能なのか。実際に藤田医科大学病院でNPとして活動する永谷ますみ氏に、働き方改革が進むなかでの問題点などを含めて詳しく紹介してもらう。

医師不在時に一時的ペーシングを

現在はNPとして心臓血管外科に固定配属となり、主に外来と病棟の患者管理を担当している。外科医とともに心臓血管外科チームの一員として活動することで、患者の経過や治療方針を理解し入院から退院までの患者管理にNPとして携わることができている。

 

医師は緊急患者対応や外来・手術などで不在となることも多く、医師不在時のファーストコール対応もNPの重要な役割である。以前心臓手術後の患者が、病棟で嚥下訓練中に迷走神経反射から高度の徐脈となり意識消失を認めることがあった。病棟に医師は不在で医師が到着するまでの間に、ベットサイドで一時的ペーシングを開始する場面を経験した。幸いすぐに患者は意識を取り戻し、事なきを得ることができた。

やりがいを感じるなかでの問題点

このように、医師不在時に入院中の患者が急変した場合など、通常であれば医師に報告がされ到着を待ってからの対応となる。しかし当院ではNPにファーストコールがあることで、緊急性の判断を即座に行い初期対応が可能となる。現在では医師から患者管理を任せられることも増え、気になる患者の経過や検査結果などの情報を共有しながら、医師不在時であっても継続した治療ができるようになった。

 

また、患者や家族に対して医師に代わり経過や今後の方針などを分かりやすく説明することで、不安や不満なく入院生活を過ごすことができるようになった。こうしたことが冒頭で述べたような問題の解決に繋がっており、NPとしてのやりがいを感じるところである。

 

NPの仕事として医行為(特定行為など)・医療行為に注目が集まることが多いが、実際には医師と議論を十分に重ね、患者の経過や治療方針などの情報をもとに多職種へフィードバックするなど、医療チームの連携を図ることに多くの時間を費やしている。現在のような医師不足の環境において、的確なアセスメントに基づいたタイムリーな治療介入ができるNPの存在は、医師が外来診療、検査、手術に専念できるためのサポートにとどまらず、患者にとって安心で安全な医療につながっていると思われる。

 

しかしながら、現状ではマンパワー不足のためNPも長時間労働傾向にあり、増員が必要となってきている。また、日本においてNPが魅力的な職種となるためには、待遇改善やモチベーションの維持が必要であると考える。今後はNPの役割拡大とチーム医療の質の向上をはかるべく、NPの広報活動を行いさらなる増員に向けた取り組みを行っていきたい。医師の働き方改革が注目されるなか、チーム医療のキーパーソンとして、医師をはじめとする医療従事者や患者に頼りにされるNPを目指していきたい。
 

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