(※写真はイメージです/PIXTA)

遺言書を書いたあとも変動する預金額。細かな財産の扱いについては、どう書けばよいのでしょう? ここでは行政書士の山田和美氏が、丙川さんの遺言書を例に、相続争いを起こさない遺言書の書き方について解説します。※本連載は、書籍『「きちんとした、もめない遺言書」の書き方・のこし方』(日本実業出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。

「遺言書作成後も変動する預金額」どう記載すべきか

なお、遺言書に不動産等のメインの財産のみを書いて、預貯金を記載しない理由の1つとして、「遺言書作成後もお金を使うので、預金の額が変動するからまだ書けない」と考えている人もいるようです。

 

しかし、この心配はいりません。

 

まず、遺言書を作成したからといって自分のお金が使えなくなるわけではありません。遺言書は相続が発生した時点で効力が生じるもの。遺言書に書いた財産の使用や処分が制限されるわけではないのです。自分の財産なのですから、当然と言えば当然ですね。

 

さらに遺言書には通常、預貯金の金額まで記載するわけではありません。金融機関名、支店名、「普通預金」「定期預金」等の預貯金の種類、口座番号といった、金融資産を特定するための情報は記載しますが、残高までの記載は必要ないのです。

 

ちなみに、公正証書で遺言書を作成する場合には、通常、公証役場に預貯金の通帳のコピーを提出します。具体的には、「口座番号等のわかる表紙裏のページ」と「現在の残高のページ」のコピーです。

 

口座残高を遺言書に書かないのに、なぜ残高のページを出すのかというと、公証役場の手数料を計算するためというのが主な目的の1つです。遺言書に金額を記載するためではありません。

 

そのため、あえて遺言書から預貯金の記載を除外する理由はないはず。遺言書には主要な財産以外も記載してください

 

厳密には、家財道具や相続開始時に財布に入っていた現金等、細かいものもすべて相続財産ですので、こういったものについても遺言書内で行先を決めておくべきです。

 

とはいえ、これらを1つひとつ明記するのは現実的ではないので、このような細かい財産をまとめて、「上記に記載のない財産はすべて、長男丙川武に相続させる。」等の一文を入れておくと安心です。

財産一覧を作成し、全体像をつかんでから遺言書作成を

さらに、遺言書を作成する段階で主要な財産以外の財産を記載しないことのもう1つのリスクとして、遺留分侵害を見落とす可能性が挙げられます。

 

遺留分を侵害した遺言書は後のトラブルのもとです。

 

遺言書を作成する段階で財産の一覧を作成するなどして財産の全体像をつかんでいれば気づけたはずの遺留分侵害を、主要な財産以外を無視することで見落としてしまう危険性があるのです。

 

この意味においてもやはり、遺言書を作成する際は、財産の全体像を見たうえで、それぞれの財産の行先を明記することをお勧めします。

 

 

山田 和美

なごみ行政書士事務所・なごみ相続サポートセンター(愛知県東海市)所長

 

 

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