「遺言信託」と「通常の遺言書」の違い
孝太郎が、「自分が亡くなったらすべて妻美子に相続させる。もし、美子がすでに亡くなっていたら、孝太郎が築いた財産は甥孝介と姪孝子に相続させ、美子から相続した遺産については甥美史と姪優美に遺贈する」という旨の遺言書を、妻美子が、「自分が亡くなったらすべて夫孝太郎に相続させる。
もし、孝太郎がすでに亡くなっていたら、美子が築いた財産は甥美史と姪優美に相続させ、孝太郎から相続した遺産については甥孝介と姪孝子に遺贈する」という旨の遺言書をそれぞれ遺すことで、実質的に信託スキームと同様のことが実現できそうに思えます。
しかし、現実的には夫孝太郎と妻美子の財産の選別は非常に困難なうえ、妻美子が一人残された後にどういう財産の使い方をするか(たとえば孝太郎の遺産から先に消費することもあり得る)や妻美子が後日遺言書を書き替えて、甥孝介と姪孝子に遺贈することを取り消してしまうこともあり得ます。
したがって、将来的に遺言内容の履行(遺言時に思い描いた資産承継の形)を確実なものにするという目的において、この信託の実行はより安心確実な方策といえるでしょう。
宮田浩志
宮田総合法務事務所代表
※本記事の事例に登場する名前はすべて仮名で、個人が特定されないよう内容に一部変更を加えております。
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