宣伝費を原価に上乗せし、お客様に宣伝していただく
2012年のオープン当時、日本ではまだインスタグラムのユーザー数は限られていましたが、わたしは大きな可能性を感じていました。思わず写真を撮りたくなるような見た目にするには、どう盛り付けようか。どんな食器やトレーを使おうか。食べてみたら、どんな発見や驚きがあるだろうか…。
そう考えて、商品を完成させました。こうして生まれた佰食屋のメニューは、「みんなに教えたくなる」ものばかりです。
そして、わたしは「広告費は一切使わない」と宣言しました。来られたお客様が喜んで、満足してくれれば、おのずと口コミで広がっていくはず。お客様一人ひとりがトップセールスマンになってくださるはず。
では、そこでなにを最大の売りにするのか。それはやはり、コストパフォーマンスでした。関西の方は人一倍、価格に対する意識が高く、「これめっちゃコスパええやん」と特に評価してくださいます。
飲食店の場合、「メニューの原価率は30〜40%に設定するのが鉄則」と言われています。それを佰食屋は無謀にも50%に設定したのです。当然、担当の税理士からは「ホンマに止めたほうがいい」と真剣に止められました。
けれどもわたしは、そこだけは譲りませんでした。仮に原価率を40%に設定したとしても、思うように売上が伸びなければ、広告宣伝費をかけることになります。原価率40%に広告宣伝費を10%上乗せするくらいなら、はじめから50%に設定しておけばいい――。
そう考えて、よりどりの食材を選びました。オープン当時、はじめの1ヵ月こそ「失敗した」と悔やんでいましたが、おかげさまで、いまでは毎月のようにメディアに取り上げられます。
個人のSNSはもちろん、食べログやGoogleローカルガイドなどの口コミサイトにも感想や写真が投稿され、みなさん、嬉しい声を寄せてくださっています。それは、決して見た目だけではない、「来てみてがっかり」のない商品力が産んでくれた評価なのだと思います。ここまで来れば、経営はとてつもなくシンプルなものになります。
1日100食限定、ひたすらにおいしいメニューを、圧倒的なコストパフォーマンスで提供し、お客様に心から満足いただく。マーケティングや売上分析、経営コンサルティングなど必要ありません。
中村 朱美
株式会社minitts
代表取締役
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