※画像はイメージです/PIXTA

争族、離婚トラブル、労働問題…弁護士事務所には今日も様々な相談が舞い込みます。本連載では、弁護士法人アズバーズ代表の櫻井俊宏氏が、実際に寄せられたトラブル事例を紹介し、具体的な対策を解説します。※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

バカッターの行為は刑事罰に問われるのか?

4 バカッターは犯罪になる!?

 

こうした問題が生じた場合、損害の賠償を求める民事裁判とは別に、従業員に刑事罰が与えられることもあります。

 

本事例ではAが鍋のスープに唾を入れたとすれば、当然鍋はもう使えなくなるので器物損壊罪(刑法261条。3年以下の懲役又は30万円以下の罰金等)が考えられます。「洗えばよい」と思われるかも知れませんが、飲食業で用いる鍋としては、もはや使うことができないと考えられるのです。

 

また、Aの行ったことが営業妨害に至っている場合、業務妨害罪(刑法233条以下。3年以下の懲役又は50万円以下の罰金)の成立の可能性もあります。

 

さらに、客や店員であっても、こうした行為をする人は、お店としては迷惑であり働いてほしくない者ということになります。そこで、施設の管理権者の意思に反して店にいるということで建造物侵入罪(刑法130条。3年以下の懲役又は10万円以下の罰金)も考えられます。

 

X社は、こうした犯罪について、警察に対して「被害届」を出すことができます。ただ、被害届が提出されても、警察には、必ずしも捜査する義務は生じません。そこで、被害届を出しても警察がなかなか動かない場合、X社は、捜査機関に対して告訴を行うこともできます。要件を備えた告訴がなされた場合には、捜査義務が生じます。

 

警察は、事件それ自体の被害の大きさだけでなく、事件の社会的な影響力などを加味して、どのような刑事処分につなげるかを考えて捜査を行うことがあります。最近の事例をみると、SNSに犯罪行為が投稿された場合は、(模倣犯の連鎖が考えられるからでしょうか)逮捕等を含む強制捜査に踏み切ることが多くなっているようです。

 

5 加害者にならないように意識すること

 

一方加害者になると、それはそれで莫大な損害を受けてしまうことを意識したほうがよいでしょう。

 

加害者となってしまうと、損害賠償を支払う義務を負うだけではなく、犯罪者として処罰されたり、前歴が残ってしまったりすることもあります。刑罰を受けなくとも、Aのように就職している人間であれば、雇い主から重い懲戒処分が下るでしょう。

 

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