※写真はイメージです/PIXTA

会社組織の基礎を変更する「組織再編行為」は株価に影響を与えます。再編により株価の上昇が相対的に抑制されるため、適切なタイミングを見計らえば自社株の移転コストを下げることも可能となります。会社法を上手く活用した事業承継術について詳しくみていきましょう。

高収益部門を分社化して株価評価を抑制

前ページは持株会社として新規で会社を設立する話でしたが、本ページは、会社の1部門を新会社として独立させることがテーマです。部門を独立会社にするにも複数の方法がありますが、ここでは、会社分割という組織再編の方法を使うこととします。

 

例えば、今C社にX事業部門、Y事業部門があるとします。前者が高い利益を上げ毎年成長している一方、後者は利益額、成長性も低いとします。ここで、会社分割により新会社としてD社を設立しX部門はD社の事業とします。

 

そして、D社はC社の100%子会社とするのです。このとき、Y事業を行いながら、同時にD社の親会社となるC社のことを、前項で見たような「純粋持株会社」との比較で「事業持株会社」といいます。

 

ここでポイントとなるのが、C社もD社も、ある程度の社員を抱えて事業を行っているために、ともに株価評価において類似業種比準方式が使えるという点です。話を分かりやすくするため、C社もD社も、株式評価上の大会社に該当し、類似業種比準方式が100%適用できるとします。

 

すると、低収益のY部門だけになってしまったC社は、類似業種比準方式における3つの比準要素のうち、利益が大幅に下がることになります。

 

一方、比準要素のうちの簿価純資産は含み益を反映させないために、D社の資本金等の分だけしか増加しません。D社の株価評価がいくら高くなっても、それによってC社の簿価純資産は増加しないのです。

 

結果として、C社の株価は大きく下がることになります。なお、会社分割をしても、オーナー経営者は、C社株を100%保有したままで変化はありません。

 

高収益部門の分社化は、個々の事業部門の規模がある程度大きく、また、ある程度の独立性を備えている場合には有効な方法です。

 

C社の社長はオーナーのままで、分社化したD社の社長に後継者を据えて、しばらく経営実務を学ばせる方法もあるでしょう。その後、適切なタイミングを見計らって、C社株を移転すればいいのです。

 

[図表2]高収益部門を分社化する方法

 

この子会社化で注意しなければならないのは、親会社となるC社の貸借対照表に計上される保有資産のうち、相続税評価額ベースで50%以上がD社株式になると、C社が「株式保有特定会社」になってしまうことです。

 

株式保有特定会社になると、C社の株価評価において類似業種比準方式が使えなくなってしまいます。

 

税理士法人 チェスター

 

 

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