(※写真はイメージです/PIXTA)

マンションの大規模修繕工事は何年おきに行うべきなのか。一般的には「12年周期」で行うべきとされ、それを推奨する管理会社や工事会社も多い。実際、マンション管理組合や住民はどう考えるべきなのか。※本連載は、松本洋氏の著書『マンションの老いるショック!』(日本橋出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

住民にアンケート調査をして改善要望を把握

■専用使用権のある共用部分の調査

 

管理組合は、区分所有者からの建物の劣化状況、使い勝手が悪い箇所や居住者の高齢化などに配慮して改善してほしい要望を把握しておくことが大切です。要望を把握しておく手段として区分所有者などに対してアンケート調査を実施するのが一般的です。

 

アンケート調査では、改善の要望などのほか、バルコニー周り、共用排水管、給水管の劣化状態、修繕の要望を把握します。アンケート調査票は理事会で作成しますが、専門家や管理会社の意見を取り入れることも必要です。

 

また、バルコニーなどの不具合箇所を特定しやすいように、バルコニーなどの略図やイラストを入れるなどの工夫も必要です。

 

アンケート調査の調査例は下記のようになります。

 

●室内:天井 ⇒ 天井漏水痕・結露・カビ・躯体部分の亀裂の有無
●外装建具:窓サッシ・網戸・玄関扉 ⇒ 錆・がたつき・損傷など
●給水関係:キッチン・風呂場・洗面所・トイレ・洗濯機盤 ⇒  水の出が悪い・水が濁るなど
●排水関係:キッチン・風呂場・洗面所トイレ・洗濯機盤 ⇒ 流れが悪い・逆流する
●その他:防犯カメラの増設・耐震化・ごみ置き場の工夫・住戸案内板の取り換え・エントランスホールの整備・防災機器の更新

 

組合員にアンケート調査を実施して、その結果を踏まえて広報を行い、説明会を開催することにより大規模修繕工事に理解と必要性を認識していただくことで合意形成を図りやすくなります。

 

■給水管排水管の更新工事

 

標準管理規約第25条では、「区分所有者は、敷地及び共用部分の管理に要する経費に充てるため管理費と修繕積立金を管理組合に納入しなければならない」と規定しています。

 

つまり、管理組合は敷地及び共用部に要する経費以外に使用することができません。

 

一方で、標準管理規約第21条第2項では、「専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の管理を共用部分の管理と一体として行う必要があるときは、管理組合がこれを行うことができる。」と規定があります。

 

共用部分と一体(つながっている)になっているものには、配管・配線などがあります。

 

費用の負担については、標準管理規約第21条関係⑧のコメントで「配管の清掃などに要する費用については、標準管理規約第27条第三号の「共用設備の保守維持費」という管理費として充当することが可能であるが、配管の取替えなどに要する費用のうち専有部分に係るものについては、各区分所有者が実費に応じて負担するべきものである。」と解説しています。

 

ですから、給水管の更新工事の費用を共用部分も専有部分も管理組合が負担することは管理規約違反になります。共用部分の更新費用は管理組合、専有部分の更新費用は区分所有者がそれぞれに負担することになります。

 

バルコニーについては、同コメント③で、「バルコニー等の管理のうち、管理組合がその責任と負担において行われなければならないのは、計画修繕等である。」としています。しかしながら、清掃や経常的な補修など日常的な維持・管理については組合員の負担で行うことになっています。

 

松本 洋
松本マンション管理士事務所 代表

 

 

マンションの老いるショック!データから学ぶ管理組合運営

マンションの老いるショック!データから学ぶ管理組合運営

松本 洋

日本橋出版

分譲マンションは現在、「区分所有者の老い」「建物設備の老い」という二つの老いの問題を抱えています。 本書では、国土交通省から公表されているデータや、筆者のマンション管理士としての経験から得た知識を基に「マンシ…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧