新型コロナワクチン接種後の消費行動や働き方の予測…約半数が外出行動を再開、約7割がマスク着用等が習慣化 (写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、ニッセイ基礎研究所が2021年7月20日に公開したレポートを転載したものです。

3―属性別ワクチン接種後の予測~女性や若者、高齢層で消費再開、管理職でテレワーク浸透の見方

1|外出型消費行動~女性や若者、コロナ禍で外出自粛傾向の強い高齢層でコロナ前の行動再開に期待

 

(1)性年代別

 

まず、外出型の消費行動について性別に見ると、いずれもそう思う割合は女性が男性を上回り、特に、友人・知人と会うこと(女性が男性より+7.7%pt)や店舗での買い物(+7.6%pt)、公共交通機関の利用(+6.6%pt)で高い[図表2]。

 

[図表2]性年代別に見たワクチン接種が進んだ後の外出型消費行動の状況(「そう思う」+「ややそう思う」)
[図表2]性年代別に見たワクチン接種が進んだ後の外出型消費行動の状況(「そう思う」+「ややそう思う」)

 

つまり、女性の方が男性よりワクチン接種後に外出型の消費行動が再開すると考えている。これは再開への期待感の強さも影響しているのだろう。

 

従来から様々な消費文脈で言われてきたように、女性の方が男性より消費意欲が旺盛であり、同じ年収階級の男女の消費性向を比べると、年収階級によらず女性が男性を上回る

※久我尚子「平成における消費者の変容(2)」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レポート(2019/3/12)

 

また、年代別に見ると、全体的に20歳代、あるいは70歳代などの高齢層ほど、そう思う割合が高い傾向がある。特に、70歳代では公共交通機関の利用(全体より+11.6%pt)や店舗での買い物(+8.7%pt)、60歳代では友人・知人と会うこと(+5.7%pt)で高い。

 

これは、コロナ禍において感染による重篤化リスクの高い高齢層ほど外出自粛傾向が強いために、外出行動再開への期待感が強い影響が考えられる。また、若者は従来から他年代と比べて外出行動に積極的であるために期待感が強いようだ。

 

職業別に見ると20歳代の多い学生では、全ての項目でそう思う割合が全体を大幅に上回り、特に旅行やレジャーは69.4%(全体より+24.3%pt)、店舗での買い物や友人・知人と会うことは69.4%(+15.0%pt)を占めて高い。

 

なお、各年代で性別に見ても、そう思う割合は、おおむね女性が男性を上回り(逆に男性が女性を5%pt以上上回るのは「コロナ前と同じように旅行やレジャーを楽しむようになる」の60歳代以上のみ)、特に、20歳代や30歳代の若い年代で差が大きい。

 

(2)ワクチン接種状況・意向別

 

ワクチン接種状況・意向別に見ると、一回目完了や一回目予約済み、(まだ予約していないが)すぐにでも接種したいと回答した層で、そう思う割合が高い傾向がある。[図表3]

 

[図表3]ワクチン接種状況・意向別に見たワクチン接種が進んだ後の外出型消費行動の状況(「そう思う」+「ややそう思う」)
[図表3]ワクチン接種状況・意向別に見たワクチン接種が進んだ後の外出型消費行動の状況(「そう思う」+「ややそう思う」)

 

つまり、接種完了間近の層や接種に積極的な層で外出行動再開への期待感が強いようだ。

 

接種完了間近の層では、特に公共交通機関の利用や友人・知人と会うことにおいて、接種に積極的な層では、外食や旅行・レジャー、店舗での買い物において、そう思う割合が高い。

 

これは、前者には高齢層が、後者には若い年代が比較的多いことが影響しているようだ。ワクチン接種一回目完了では60歳以上が64.6%を占める。一方、すぐにでも接種したいでは60歳以上は16.7%にとどまる一方、20~30歳代は31.4%を占める

※ワクチン接種状況の詳細は第五回調査結果概要等を参照。

 

一方、接種に消極的な層では全体的にそう思う割合が低い。中でも、絶対に接種したくない層では、そう思う割合はいずれも2割台にとどまる。ワクチン接種に消極的であるがために、特に生活は変わらず、期待感も弱いということだろう。

 

なお、接種に消極的な層は、感染による重篤化リスクの低い若い年代が多く、絶対に接種したくないでは20~30歳代が50.6%を占める。

 

2|生活様式・価値観等~不安の強い女性や重篤化リスクの高い高齢層でマスク着用等習慣化の見方

 

(1)性年代別

 

生活様式・価値観等について性別に見ると、いずれもそう思う割合は女性が男性を上回り、特に、マスク着用や社会的距離の習慣化(女性が男性より+12.9%pt)やワクチン接種済み証明の有無による差別や分断(+8.7%pt)で高い[図表4]。

 

この男女差の背景には感染による不安の強さの違いがあるようだ。

 

調査では新型コロナウイルスに関連する様々な不安の度合いを尋ねているのだが、不安のある割合(「非常に不安」+「やや不安」)は「感染による健康状態悪化」では男性52.2%、女性65.8%(男性より+13.6%pt)、「世間からの偏見・中傷」では男性42.6%、女性60.3%(+17.7%pt)、「感染による人間関係への悪影響」では男性38.5%、女性55.7%(+17.2%pt)を占める。

 

つまり、男性より女性の方が感染による悪影響について、健康面でも人間関係面でも不安を強く感じている。その結果、マスク着用等が習慣化すると考えるのだろう。

 

年代別には、高年齢ほどマスク着用等の習慣化でそう思う割合が高く、70歳代では8割を超えるが、20~30歳代ではそう思う割合が低く6割程度にとどまる。ワクチン接種後も感染による重篤化リスクの高い層ほどマスク着用等を積極的に考えているようだ。

 

[図表4]性年代別に見たワクチンの接種が進んだ後の生活様式・価値観等の状況(「そう思う」+「ややそう思う」) [図表5]ワクチンの接種状況・意向別に見たワクチン接種が進んだ後の生活様式・価値観等の状況(「そう思う」+「ややそう思う」)
[図表4]性年代別に見たワクチンの接種が進んだ後の生活様式・価値観等の状況(「そう思う」+「ややそう思う」)
[図表5]ワクチンの接種状況・意向別に見たワクチン接種が進んだ後の生活様式・価値観等の状況(「そう思う」+「ややそう思う」)


(2)ワクチン接種状況・意向別

 

ワクチン接種状況・意向別に見ると、マスク着用等の習慣化は接種完了や間近の層ほど、そう思う割合が高く7割を超えるが、これは前述の通り、高年齢層が多いことによる[図表5]。一方、接種に消極的な層ほど、マスク着用や社会的距離の習慣化について、そう思う割合が低いが、これは逆に若い年代が多いためだろう。

 

3|働き方~家事・育児負担の大きな女性や管理職以上でテレワークの浸透に肯定的

 

(1)性年代別

 

働き方について性別に見ると、いずれもそう思う割合は女性が男性を上回り、特に、出張が減りオンライン会議が増えること(女性が男性より+6.6%pt)やテレワーク併用が主流になること(+5.9%pt)で高い[図表6]。つまり、女性の方が男性より、ワクチン接種が進んだ後にテレワークが浸透すると考えている。

 

[図表6]性年代別に見たワクチン接種が進んだ後の働き方の状況(「そう思う」+「ややそう思う」)
[図表6]性年代別に見たワクチン接種が進んだ後の働き方の状況(「そう思う」+「ややそう思う」)

 

これは女性の方がテレワークが浸透することに対して肯定的であり、期待感も強いためだろう。

 

調査では、テレワーク環境が浸透し、在宅勤務が増えることについての就業者の意識も捉えているのだが、女性の方が男性より「在宅勤務が増え通勤が減ることで、郊外の居住が増える」(男性29.7%、女性42.1%で男性より+12.4%pt)や「在宅勤務が増え、人間関係のストレスが減る」(21.6%、33.8%で+12.2%pt)、「在宅勤務が増え、時間管理型から成果主義の報酬体系へと変わる」(30.0%、35.6%で+5.6%pt)、「在宅勤務が増え、都合の良い時間に働きやすくなる」(30.5%、35.0%で+4.5%pt)といった項目でそう思う割合が高い。

 

また、従来から女性では仕事と家庭との両立にあたり、家事や育児の負担が大きいことは様々なところで指摘されており、テレワークの浸透による柔軟な就労環境の整備への期待感は強い。例えば、内閣府「令和2年版男女共同参画白書」によると、2016年の共働き世帯の家事・育児・介護時間は、夫は週平均39分だが、妻は258分であり、3時間半以上の差がある。

 

年代別には、50歳代を底に若い年代ほど、コロナ前のように勤め先で飲み会等が実施されることについて、そう思う割合が高い。高齢層でそう思う割合がやや上昇するのは、高齢層では無職が多く、自分自身のことではなく世間一般のことを想定して回答しているためだろう。なお、専業主婦・主夫や無職等は60歳代で51.8%、70歳代で80.0%を占める。

 

このほか、20歳代でテレワーク併用が主流になることについて、高齢層ほど出張が減りオンライン会議が増えることについて、そう思う割合がやや高い傾向がある。

 

(2)就業形態別

 

就業形態別に見ると、正規雇用者の管理職以上で、テレワークを併用した働き方が主流になることや出張が減りオンライン会議が増えること、コロナ前のように飲み会が実施されることについて、そう思う割合が高い[図表7]。

 

[図表7]就業形態別に見たワクチン接種が進んだ後の働き方の状況(「そう思う」+「ややそう思う」)
[図表7]就業形態別に見たワクチン接種が進んだ後の働き方の状況(「そう思う」+「ややそう思う」)

 

一方、自営業・自由業では全体的に、そう思う割合が低い傾向がある。

 

なお、先の在宅勤務が増えることについての就業者の意識について就業形態別に見ると、「在宅勤務が増え、人間関係のストレスが減る」を除くと、正規雇用者の管理職以上で、在宅勤務が増えたことで生じる効果について、そう思う割合が高い傾向がある※​

※なお、「在宅勤務が増え、人間関係のストレスが減る」ことについては、正規雇用者の管理職以上では、そう思う割合はむしろ低く(19.4%)、正規雇用者(一般)(28.6%)や非正規雇用者(27.4%)、自営業・自由業(23.1%)の方が高い。

 

管理職以上は、組織においてテレワークを推進していく立場にあることや、在宅勤務の利用をはじめ日頃の業務における裁量の幅が大きいこと、また、現場業務が比較的少ないために在宅勤務を活用しやすいことなどから、テレワークの浸透に対して肯定的な見方が強いと考えられる。

4―おわりに~苦境に立つ業種の救済につながるような需要喚起策を

ワクチン接種先行国のイギリスでは変異種による感染が急速に拡大することで、1日の新規感染者数は再び3万人を超える事態となっている。一方で、ワクチン接種が進むことで、死者数は格段に抑えられ、昨年冬頃は1日当たり千人を超えた時期もあったが、足元では50人を下回る日が続いている

※REUTERS COVID-19 TRACKER, Our World in Data

 

また、7月に開催されたサッカー欧州選手権の決勝では、数万人のサポーターがマスクを着用せずに密集してスタジアムで観戦する姿が印象的であった。日本では価値観や文化の違いから、ワクチン接種が進んでも、即、同様の状況にはなりにくいだろうが、確実にコロナ禍の出口は見え始めている。

 

本稿で見たように、ポストコロナにおける外出型の消費行動再開については、コロナ前から消費に積極的な若者や女性、コロナ禍で自粛傾向の強い高齢層で期待感が強い。また、出口へ向けた期待が高まる中ではコロナ後の消費を見据えた前売り販売なども響きやすい時期だろう。

 

今後、ワクチンパスポートの国内活用なども組み合わせながら、消費を牽引する可能性の高い層などへ向けて需要喚起策が講じられることで、コロナ禍で苦境に立つ飲食業や旅行業などの救済が進むことを期待したい。

 

なお、ニッセイ基礎研究所で継続的に調査を実施することで、今後とも、コロナ禍における意識や行動変容について分析していく予定だ。

 

 

久我 尚子

ニッセイ基礎研究所

 

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ニッセイ基礎研究所 生活研究部  上席研究員

【職歴】
 2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
 2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
 2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
 2021年7月より現職

・内閣府「統計委員会」専門委員(2013~2015年)
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017~2018年)
・東京都「東京都政策連携団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2019年~)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~)
・総務省「衛星放送の未来像に関するワーキンググループ」委員(2020年~)

【加入団体等】
 日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
 生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society

著者紹介

連載ニッセイ基礎研究所レポート・インサイト

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