(※写真はイメージです/PIXTA)

せっかく有効な遺言書を書いても、相続で裁判となる可能性があります。ここでは行政書士の山田和美氏が、太郎さんの遺言書を例に、相続争いを起こさない遺言書について解説します。※本連載は、書籍『「きちんとした、もめない遺言書」の書き方・のこし方』(日本実業出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。

手続きを「文面から明らかに想定できる」内容とは

なお、割合での記載が一概にダメというわけではありません。

 

少し難しい話になりますが、たとえば、不動産のみは特定遺贈で長男に相続させると個別に明記したうえで、預貯金等の金融資産は遺言執行者で解約換金し、その換金された額の3分の2を長男に、残りの3分の1を二男に相続させると記載する方法などもあります。

 

この場合、故人の預金を払い戻すにあたって、原則として遺産分割協議は必要ありません。なぜなら、金融機関が「結局、誰に払い戻せばよいのか」と迷う余地はなく、遺言執行者に対して払い戻せばよいことが明白なためです。

 

また、1人の相手に対して全財産を相続させる(遺贈する)という場合にも、包括遺贈で問題はありません。

 

この場合にも、その1人に対して預貯金を払い戻したり不動産の名義を移転すればよいことは明らかだからです。

 

問題になるのは、本例のように、不動産も預貯金もひっくるめて、複数の人に対して「3分の2を長男に、3分の1を二男に」などと定める場合です。この場合は遺言書がない場合と同様、遺産分割協議が必要になってしまいます。

 

遺言書を作成する際は、記載の簡単さや、形式面のみに着目するのではなく、作成した遺言書を使って実際に手続きをする際の流れまで想定し、内容を検討するようにしましょう

 

このあたりは少し複雑なところではありますので、少しでも迷ったら専門家に相談することをお勧めします。

 

 

山田 和美

なごみ行政書士事務所・なごみ相続サポートセンター(愛知県東海市)所長

 

 

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残念な実例が教えてくれる 「きちんとした、もめない遺言書」の書き方・のこし方

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山田 和美

日本実業出版社

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