※画像はイメージです/PIXTA

農地は面積が広いため、相続税や贈与税が課税されると税額が高くなってしまいますが、納税のために農地を処分すると、後継者が農業を続けられなくなるという弊害があります。そこで、後継者が農業を続ける場合や一定の条件のもとで農地を貸し出す場合は、農地にかかる相続税や贈与税を猶予する特例が設けられています。今回は農地の納税猶予の特例について徹底解説します。

農地の納税猶予の特例についてのQ&A

以下で、農地の納税猶予の特例に関するさまざまな疑問に答えていきます。

 

Q.家庭菜園でも認められる?

家庭菜園では農地の納税猶予は認められません。

 

農地であるかどうかの判断は、登記簿上の地目ではなく現況で判断します。したがって、地目が宅地であっても、耕作をしていれば農地にあたります。ただし、家庭菜園は宅地を部分的に利用しているにすぎないため農地とは認められず、農地の納税猶予の特例は適用できません。

 

Q.作物の範囲に制限はある?

農地の納税猶予の特例が適用できる土地は、農地、採草放牧地、準農地です。この条件に当てはまれば、作物の範囲に制限はありません。植木であっても適用できます。

 

Q.休耕地について適用はできる?

納税猶予の適用を受けることができる「農地」とは、「耕作の目的に供されている土地」を言うとされています。したがって、耕作をしようと思えばいつでも耕作することができるようないわゆる「休耕地」については、現に耕作はしていないものの「耕作の目的に供されている土地」として、納税猶予を適用することができます。

 

ちなみに、次のような理由で「現に耕作をしていない場合」にも適用を受けることができます。ただし、これらの理由が起こる直前まで農地として耕作が行われていた場合に限ります。

 

  • 災害、疾病等のためやむを得ず一時的に耕作ができない農地
  • 土地改良事業、土地区画整理事業などで農業に使用できない農地
  • 国や地方公共団体等の事業のために一時的に使用されている農地(一定の条件があります)

 

特例を適用したのちに休耕地を転用した場合は、その時点で納税の猶予が取り消され、猶予されていた相続税・贈与税と利子税を納めなければなりません。

 

Q.いわゆるヤミ小作農地について適用できる?

いわゆるヤミ小作農地など他人に耕作させている農地について、農地の納税猶予の特例は適用できません。

 

Q.納税猶予の適用後に体調不良で農業を継続できなくなった場合にはどうなる?

納税猶予を適用した後に相続人が体調不良で農業を継続できなくなった場合は、特定貸付をすることで納税猶予を続けることができます。

 

農地が市街化区域など特定貸付のできない区域にある場合や、特定貸付を申し込んで1年を経過する日までに貸付ができなかった場合は、営農困難時貸付の特例を適用して納税猶予を続けることができます。営農困難時貸付の特例は、重度の身体障害等が生じた場合に適用することができます。

 

Q.生産緑地について適用できる?

農地の納税猶予は生産緑地についても適用できます。

 

三大都市圏(首都圏、近畿圏、中部圏)の特定の市や区の市街化区域内にある農地は、農地の納税猶予の特例が適用できませんが、これらの区域内であっても生産緑地地区内であれば適用できます。

 

ただし、「買取の申出がされたもの」、「特定生産緑地の指定(及び指定の延長)がされなかったもの」、「特定生産緑地の指定の解除がされたもの」については適用できません。

 

※ただし、既に納税猶予の適用を受けている場合は、打ち切りとならずそのまま継続することができます。

 

Q.2人以上の相続人で共有取得して農業を共に行う場合にはどうなる?

2人以上の相続人で共有取得して農業を共に行う場合でも、相続税の納税猶予の特例が適用できます。ただし、相続人に農業を行わない人がいる場合は、その人の持分について特例は適用できません。

 

Q.相続人が未成年者でも適用できる?

農地の相続人が未成年者である場合は、その未成年者と同居して同一生計にある親族が農業を行うのであれば、相続税の納税猶予の特例が適用できます。

 

未成年者であった農地の相続人が成人したときまたは成人した後で学校を卒業したときなど一定の場合は、相続人が自ら農業を行わなければ、その時点で納税の猶予は取り消されます。

他にも様々な要件が!実際に適用する際には税理士へ

以上、農地の納税猶予の特例についてお伝えしました。農地の納税猶予の特例は、相続人が引き続き農業を行うことを前提に、相続税と贈与税が事実上免除される制度です。農地を引き継いで農業を続ける場合にはぜひ適用したいものです。

 

ただし、農地の納税猶予の特例には、ここでお伝えした内容のほかにもさまざまな要件や例外措置があり、数百ページの解説書が出版されているほどです。実際には、個別のケースで特例が適用できるかどうかを自身で判断することは難しいでしょう。

 

また、実際に特例を使用するためには、10ヵ月という相続税の申告期限までに行わなければならないことがたくさんあり、慣れない方だと手続きに漏れがあり納税猶予を受けられなくなってしまうこともあります。納税猶予の適用をお考えの場合は必ず相続専門の税理士に相談してください。

 

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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