ショートステイのお泊り接種で、コロナワクチン接種を行うことができた黒川家のじーじ。ワクチン接種後のお風呂に入る、入らないで騒動を起こしたというじーじだったが、2度目のワクチン接種後は食欲減退という副反応が出たという。連載「見つめてひらめく介護のかたち『楽しむ介護』実践日誌」の著者の黒川玲子さんが介護の日々を現場報告する特別編をお届けします。

2回目ワクチン接種後、食欲がなくなる副反応が

「で、お風呂には入らなかったの?」と聞いてみると。

 

「入った…後ろに並んでいた、ばあさん達に、いいから早く入りなさいよ! と怒鳴られた…」

 

職員さんに説得されたのかと思いきや、じーじがごねている間に他の男性利用者の入浴はすべて終わり、順番を待っていた数人の女性利用者に一喝されしぶしぶ入ったらしい。

 

認知症の父親は「今日は絶対に風呂に入らんからな」と意気揚々と出かけて行ったというが…。(※画像はイメージです/PIXTA)
認知症の父親は「今日は絶対に風呂に入らんからな」と意気揚々と出かけて行ったというが…。(※画像はイメージです/PIXTA)

 

後日、騒ぎを起こしたお詫びにショートステイに連絡をいれたが、「そのような報告は入っておりません」とのこと。入浴の時間は、職員さんは大忙しだから、気にしてもらえなかったのかもしれない。

 

「忙しくて気が付いていない」——。国が決めた最低人員配置基準で運営している事業所でよく見る光景だ。つまり、利用者一人ひとりにゆっくり関わっている時間をもてるほどの人手がいないということだ。

 

事業所の中には「手厚い介護」と称して、最低人員配置基準より多い職員を配置しているところもある。職員が多ければその分、利用者にゆっくり関われる。しかし、職員が多い分、利用料は高くなる。

 

じーじの件も、職員さんに余裕があったら、「普段とは様子が違った」と報告が入っていたかもしれない。

 

しかし、2回目の接種後にまた「細菌学が~」と言い出し、女性利用者さんに迷惑をかけるのも悪いと思い、「次回の入浴は、本人の意思でお願いします」とだけ伝えた。

 

2回目の接種日当日。

 

「今日は絶対に風呂に入らんからな」と意気揚々と出かけて行った。

 

翌日、送迎者から降りてきたじーじは、まったく元気がない。うつむき加減で足元もふらついている、おまけに、パジャマに着替えることなくベッドに直行。食欲もなく、下痢気味でふらつきながら何度もトイレに通うその姿は、ちょっと痛々しい。

 

普段、食欲旺盛なじーじが、2週間ほど食欲がなかった。知人のお母さまも接種後、急に食が細くなったと言っていた。報道では伝えられていないが、もしかすると食欲がなくなるのも副反応のひとつなのかもしれない、普段からあまり食べない高齢者がいる家族にとっては心配だろう。

 

副反応も気になったが、私の最大の関心事は、お風呂にはいったかどうかである。少し元気になった頃に聞いてみたところ答えは「知らん!」。どうやら、2回目のワクチン接種したことは忘れてしまっているらしい。

 

食欲旺盛なじーじが食欲がなくなるという“副反応”もあったが、ショートステイでのお泊り接種でじーじは2回のワクチン接種を無事終えることができたので、ひと安心の黒川家であった。

 

黒川 玲子
医療福祉接遇インストラクター
東京都福祉サービス評価推進機構評価者

 

 

認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌

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黒川 玲子

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わけのわからない行動や言葉を発する前に必ず、じーっと一点を見据えていることを発見! その姿は、どこか遠い星と交信しているように見えた。その日以来私は、認知症の周辺症状が現れた時のじーじを 「認知症のスイッチが入っ…

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