(※画像はイメージです/PIXTA)

2020年の春以降、自らの感染リスクと隣り合いながら、新型コロナウイルスの感染者の治療にあたる医師たちが機会あるごとにメディアに取り上げられてきた。それを見て改めて医師という仕事の大変さを知り、使命を全うする姿に心を動かされた人も少なくないのではないか。歴史に残るパンデミックの中で奮闘する医師たちの姿は医学部医学科(以下、医学部)を目指す受験生たちにどのように映り、どんな影響を与えたのか。駿台予備学校の医学部受験専門校である市谷校舎の教務マネージャーの宮辺正大氏と受験データとともに、大学入学共通テスト(以下、共通テスト)元年となった2021年度の医学部入試を振り返ってみたい。第1回は、国公立大全体の2021年度の入試動向と、近年の医学部人気について解説する。

“安定的高収入志向”の追い風となった定員増

2021年度に志願者数を大きく伸ばしたのが、ワクチン開発などで注目の集まった薬学系だ。その一方で大幅減になったのが、スポーツ・健康系、芸術系、国際関係系などで、外国語系や国際関係系は新型コロナウイルスの煽りを受けているのが伺える。

 

こういった中で医学系は対前年度指数で99とほぼ同水準。2020年度の対前年度指数87と大きく減少したことから、宮辺氏は「2012年をピークに、減少傾向にあった国公立医学部の志願者数は、今年度はなんとか減少が止まった」とみる(表3)。

 

※文部科学省発表数字をもとに駿台予備学校が独自作成。
【表3】「医学部医学科 志願者数推移」 ※駿台予備学校調べ。

 

2012年度をピークとしてなぜ医学部志願者が減少してきたか。その前に大きな流れでは「根強い医学部人気」が続く医学部入試のトレンドをおさらいしておきたい。

 

話は、世界中を震撼させたリーマンショックまで遡る。2008年の金融危機を境に、企業で定年まで働き続けることの厳しさを改めて認識した人は少なくないだろう。子どもたちは、そんな大人たちの姿をしっかりと感じ取っている。医学部人気の背景にあるのが、受験生の“安定的高収入志向”といわれる。

 

「“手に職”をつけ安定的に高収入を得たいと考える受験生が急増し、医学部の難易度が急激に上がっていきました。特にトップクラスの中高一貫校の理系上位者たちが東大にするか、医学部かに迷い、最終的には医師になるために医学部に進学していったのです」と宮辺氏は分析する。

 

そこに政府が掲げる地方の医師不足、偏在の対応策となる「臨時定員増」が重なる。2007年度は7625人(国公立大・私立大合計)に抑えられていた医学部医学科の入学定員だが、各大学が次々に地域枠(地域医療に従事する医師を養成するための枠)を新設して増員を果たす。10年後の2017年度には定員は1795人増の9420人までに拡大し、一挙に間口が広がった。そういったことに受験生は、敏感に反応してきた(表4)。

※駿台予備学校調べ。
【表4】「医学部医学科入学定員について」 ※駿台予備学校調べ。

 

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