月5万円の収入が継続すれば、2000万円問題も解消する
「定年ひとり起業」の提案は、雇われる働き方ではなく、自ら仕事を作って稼ぎ続けることにより、現役レベルのフロー収入をできるだけ長く獲得し、維持し続けようということです。
もちろん、「定年ひとり起業」をしてフリーランスで稼ぐ人たちの中でも収入の格差は大きいのが現実です。
うまくいく人は現役時代の収入を超えている人もいますし、逆にほとんどボランティアと変わらないくらいの収入しか得られない人もいます。
実際にはその中間くらいの人が最も多いでしょう。
ただ、例えば月5万円の収入であったとしても、フロー収入が入り続けることになれば、金融庁の報告書で想定していた「月5万5000円不足」の大半が埋まることになり、老後2000万円不足問題もほぼ解消してしまいます。
筆者が自らのマネープランとして考えているのは、ひとり起業後の毎月の収入を、生活費を払っても余剰が出て、逆に積み立て投資ができるくらい稼ぎ続けることです。
そしてできる限りその状態を長く続けることなのです。
それが可能になれば、2番目のポイントである「何歳から年金を受け取るのか」について、繰り下げ受給により年金額をアップさせる、という選択が可能になるからです。
年金は、取り敢えず「繰り下げ」を選択しておこう
2021年現在では、年金受給の開始は「60歳から70歳の間」で選択が可能な制度になっていて、65歳を基準に5歳までの繰り上げと5歳までの繰り下げが選べます。
これが、2022年4月からは繰り下げの期間だけが拡大され、75歳まで繰り下げることが可能になりました。
70歳まで延ばすと年金額は65歳からもらう金額の142%となり、さらに75歳まで延ばせれば184%と大幅にアップします。
年金受給開始の繰り下げについてはよく「どちらが得か」という議論になるのですが、「自分が何歳まで生きるのか」というのが誰にも分からない以上、絶対の正解はありません。
だからこそ年金は保険なのであり、「年金保険」と呼ばれるのです。
但し、もし75歳まで受給を延ばしても別の収入があって生活に支障がないという状態を作り出せれば、その後年金生活者になっても不安はほぼなくなるでしょう。65歳から受給する場合に比べて金額が184%になり、かつ年金受給開始時点での平均余命も10歳くらいは短くなっているからです。
また、会社員を長くやっていた人は、年金の繰り下げについては基礎年金、厚生年金のそれぞれについて選択が可能です。
基礎年金のみ繰り下げ、厚生年金のみ繰り下げ、両方とも繰り下げ、の3つから選べるのです。
しかも、65歳の受給開始年齢になった時点で「何歳から受け取る」とあらかじめ決める必要はありません。
取り敢えず「繰り下げ」を選択しておいて、受け取りたくなったタイミングで、その月に申請をすればいいだけです。
つまり、フリーランスとしてのフロー収入の推移を見ながら、生活費との兼ね合いで、年金が必要になったタイミングで、受給開始を自分で決めることができます。
それがたまたま70歳でもいいし、1ヵ月単位で好きな年齢の好きな月から受け取ることができます。
その繰り下げる限度が75歳まで延びた、というわけです。ですから、年金の受け取り方は、「ひとり起業」をした後に、マネープランを立てながら随時、見直すということになります。
大杉 潤
経営コンサルタント
ビジネス書作家
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