(※画像はイメージです/PIXTA)

世界的な株式市場の好調を背景に、投資をはじめる人が増えています。しかし、自分なりの判断基準も持たずに取り組んでいても、資産は目減りしていくだけ…。投資の原理原則を理解し、実践することが重要です。株式投資をする上で最低限知っておくべき「投資の考え方」を経済コラムニストとして幅広いメディアで活躍する、オフィス・リベルタスの大江英樹氏が解説します。※本記事は『あなたが投資で儲からない理由』(日本経済新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

株価が「理論価格通り」にならない理由

したがって、株価を予測するにはこの①と②を考えればよいのだ。

 

「でも、②の割引率はいいとして、将来にわたって生み出す全ての利益って、どうやって足し算すればいいの?」と思われるかもしれないが、心配する必要はない。なぜなら遠い将来の利益を現在価値に置き直すと、ほとんど影響ないぐらいに小さい数字になってしまうからだ。

 

例えば100年後の100万円の現在価値は割引率を5%とした場合、7600円になるし、200年後の100万円はなんとたったの58円である。このため、遠い将来の価値は限りなくゼロに近くなるので、実際の計算をする場合には毎年の利益を割引率で割ってもほぼ問題はない。

 

つまり、具体的な株価の理論値を出すには、予想する1株当たりの利益を割引率で割ればいい(本当はもう少し複雑だが簡潔に言えば、これでも良いだろう)。例えば1株当たりの利益が50円で、割引率を5%とした場合、50円÷0.05=1000円ということになる。ごく荒っぽく言ってしまえば、これがその株式の理論価格なのだ。

 

理屈の上では非常に簡単だが、実際にはそんな簡単に株価が予想できるわけではないし、理論価格通りになることはまずあり得ない。なぜなら、株価というものは人々の感情によって大きく揺れ動くからだ。したがって株価がこうやって計算された理論価格通りになることは滅多にない。

投資で判断に迷ったら「原理原則」に立ち返って考える

さらに厄介なのが①の「将来の利益の予想」である。これはあくまでも将来のことだから絶対確かなものではない。予想をしても大きく変わることはもちろん起こりうる。したがって、株価を決定する要因が理解できたからと言って、それで株式投資がうまくいくわけではない。それなら、別にこんなこと知らなくても良いのではないかと思われるかもしれないが、少なくとも株式投資をする上で、これらの原理原則は知っておくべきなのだ。なぜなら投資をする上で判断に迷った時は原理原則に立ち返って考えてみることが大事だからだ。

 

もちろん、原理原則を知っていたからと言って必ず投資が成功するわけではない。しかしながら、知らないよりは成功する確率は高くなると考えていいだろう。投資家には流派があり、それぞれの”教義”があるが、「株式の価値は、その企業が将来にわたって生み出す全てのキャッシュフローの現在価値の合計」というのは、特定の流派の考えではなく、ほぼ永遠不滅の定理と言っていいだろう。

 

ただ、流派によっては「企業の将来の利益を予想するのは不可能」という考えから投資の意思決定において企業の業績や成長性といったファンダメンタルではなく、過去の動きであるチャート分析に重きを置く人たちもいるというだけのことだ。読者諸氏がどのような考えに基づいて投資判断を行うかは自由であるが、この基本だけは知っておいた方がいいだろう。

 

 

大江 英樹

株式会社オフィス・リベルタス 代表取締役

1級ファイナンシャルプランニング技能士

 

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