(※写真はイメージです/PIXTA)

アフターコロナのビジネスを展望した時、ビジネスリーダーが「はまりやすい落とし穴」があるという。 ※本連載は、ダグ・スティーブンス氏の著書『小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」』(プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです。

経営者は検証可能で、立証できるものに惹かれる

今挙げた項目はいずれも予見しやすい。長期的には、ほとんどの企業が「想定外だった」と慌てふためくような話ではないため、どうしても重要度は低くせざるを得ない。短期的に懸念を抱くかもしれないが、最終的に業界を干上がらせるような問題ではない。小さな悩みに目を奪われている背後で進んでいる本当に大きな変化こそ、企業を、いや、場合によっては業界をまるごと吹き飛ばしてしまいかねないのである。

 

したがって、賢明なビジネスリーダーは、もっと先に視線を向け、小売りの世界や消費者行動の深層で進む特徴的な変化を見極めようとする。そのような視点を提示するのが、本連載の役割である。

 

アメリカはワクチン接種が進み、元の生活に戻ろうとしているという。(※写真はイメージです/PIXTA)
アメリカはワクチン接種が進み、元の生活に戻ろうとしているという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

■偏狭な考えを捨てよ

 

第2のリスクは視野の狭さだ。新たに姿を現し始めた消費者行動に対応する際、答えをすべて自分の業界や分野という狭い範囲で探そうとする発想はいただけない。小売業者は小売り、ホテルはホスピタリティ、銀行は金融のみに専念しがちだ。それに輪をかけて悪いことに、同じカテゴリー内でも、靴屋は他の靴屋を見ていて、電器店は他の電器店を見ている。いつのまにか、経営幹部は針穴から世界を見るようになっているのだ。

 

むろん、自宅の玄関先にある危険に目がいくのは当然の反応だが、身内のカテゴリーや業界のなかだけを眺めていては、顧客や社会、さらには小売市場で起こっている、はるかに重要な変化は見えてこない。

 

■現在重視か未来重視か

 

次に、未来を予測しようとする際、現在を見る目が実に粗くなる傾向がある。ジャーナリストのロブ・ウォーカーは先ごろ、ビジネスニュースサイトの『Marker』で次のように書いている。

 

「恒久的な変化に関する予測決定版などと言われるものは、じっくり吟味してみると、完全に間違っているとは言えないが、往々にして最近のトレンドの延長線上にある一番極端な状況を言っているに過ぎない。要するに、そのような予測に登場する未来とは目先を変えただけの現在であって、単に今をもっと新しくしたというだけのことである」

 

まったくそのとおりで、そう考えてしまう理由がある。たいていの人々にとって、現在は未来よりもはるかに快適だからだ。現在の状況には土地勘があるし、多くの経営者がやっているように、数字で具体的に説明することもできる。抽象化と予測の世界に足を踏み入れる必要もなく、現時点でわかっていることや理解していることを手がかりに推定するほうがはるかに楽である。

 

経営者というものは、統計に基づいていて、検証可能で、立証できるものに惹かれる傾向がある。未来には、こうした経験に基づくガードレールが存在しない。それどころか、自分で用意しなければならない。

 

つまり、未来は、われわれが快適でいられるかどうかなど、知ったことではないのである。ビジネスリーダーとしては、現在のその先を見据え、社会や行動のおぼろげな変化を見つけ出していかなければならない。

 

次ページ未来を「白か黒か」の二元論で考えるワナ
小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」

小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」

ダグ・スティーブンス

プレジデント社

アフターコロナに生き残る店舗経営とは? 「アフターコロナ時代はますますアマゾンやアリババなどのメガ小売の独壇場となっていくだろう」 「その中で小売業者が生き残る方法は、消費者からの『10の問いかけ』に基づく『10の…

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