できることは自分で、できないことは手伝ってもらう
●介護サービスの目的は自立支援と重度化防止
2018年4月から、介護保険法の改正と介護報酬(介護保険サービスの費用)の改定が同時にありました。これに合わせて、保険者である市区町村や介護事業者に求められたことは、利用者の「自立支援」と「重度化防止」でした。これは介護サービスの受け手側である要介護高齢者にも、間接的に求められるテーマです。
介護事業者に求められているのは、利用者の「自立支援」ですから、利用者ができることとできないことをはっきりと見極めて、本人ができないことをサポートし、できることは自力でやってもらうような対応をしなければなりません。これまでは、利用者ができることまで介護職員が手を出していたので楽になった反面、利用者の要介護状態が悪化してしまう傾向がありました。
●利用者ができることはやってもらう
重度化防止については、利用者の現状を維持するサービスを提供するよう、介護事業者に求められています。時には、ちょっと辛い動作でも、やればできることは利用者の重度化防止のためにやってもらうという考え方が少しずつ浸透していくでしょう。
要介護状態になっても、自分でできることとできないことを自分なりに知ること(自覚すること)は重要です。
例えば、部屋の掃除を例にとると、掃除機を使って床を掃除することができる人でも、腰痛やひざ痛で床を雑巾がけすることは難しいです。訪問介護のホームヘルパー(訪問介護員)には、床の雑巾がけを手伝ってもらうことになります。
また、玄関の床をほうきで掃くことはできるけれど、玄関のドアの拭き掃除は上部に手が届かないので、ヘルパーにやってもらうことになります。
長年住み慣れた家で、若い時からやっていた自分なりの掃除のやり方が一部できなくなっていても、ヘルパーといっしょに掃除することにより、家をきれいにしている充実感もあるはずです。そうしたほんのちょっとした前向きな気持ちの積み重ねが、要介護者が在宅生活を続けられる力になります。
●地域包括ケアシステムの推進が急がれる
2025年には806万人の団塊の世代(昭和22年~24年生まれ)が75歳以上になり、いずれは介護施設に入所できない人が増えることは容易に想像できます。
ですから、要介護状態になってもできるだけ在宅サービスを利用して最期まで住み慣れた地域で暮らし続けられるしくみ(地域包括ケアシステム)を、国をあげて進めているわけです。
福岡 浩
介護業務運営・業務改善コンサルタント
元介護サービス情報の公表制度主任調査員
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