(※画像はイメージです/PIXTA)

超高齢化社会の日本では、介護は身近な問題です。ここでは、骨折した高齢母の入退院に悩む子のケースのほか、夫を1人で介護する妻の事例をあげながら、最適な介護サービス・施設の活用術を解説します。※本記事は長年に渡り介護事業の運営・マネジメントに携わってきた福岡浩氏の著書『プロの調査員が教える! 介護事業所・施設の選び方が本当にわかる本』(自由国民社)より一部を抜粋・再編集したものです。

夫の認知症が悪化、妻も高齢で在宅介護が困難に

認知症の83歳の夫(要介護4)を79歳の妻が1人で介護してきました。最近症状が悪化し、妻も体力が落ち、在宅では限界になりつつあります。

 

●早期の診断と治療が予後を決める

 

認知症を発症すると最初に見られる症状は、記憶障害です。少し前に言ったことや言われたことを忘れてしまいます。単なる「物忘れ」と見過ごすこともありますが、早期診断、早期治療で、その後の家族の介護負担に大きな差が出ます。また、認知症の人への対応の仕方が悪いと、症状は増々進行します。

 

この夫は、初期症状が見られてから1年以上も経って、専門医の診断を受けました。医師が処方した認知症の進行を遅らせる薬で、症状の安定を目指しましたが、飲み忘れが頻繁になり、かえって症状が悪化し始めました(要介護4)。79歳の妻は1人で夫の世話をしてきましたが、性格が変わったように怒り出したり、トイレの場所がわからなくなって混乱する夫の世話が大きな負担になってきました。

 

●認知症グループホーム入居を検討

 

認知症の人を受け入れる施設で、よく知られているのは認知症グループホーム(認知症対応型共同生活介護)です。

 

83歳と79歳の夫婦は、少なくとも50年以上連れ添ってきたはずです。認知症の夫にとってグループホームという生活の場に移ることで環境が大きく変わりますから、それが引き金となり、症状がさらに悪化する可能性もあります。

 

妻がいない環境、住み慣れた家とは違う環境になじめるかどうかが気になります。ある日突然、妻がいない生活になると、その不安な気持ちが症状を進めてしまうリスクがあります。

 

そこで、妻が時々顔を出せる近距離のグループホームで、小規模多機能型居宅介護や認知症デイサービス(認知症対応型通所介護)が併設されているところだと、なお都合がよいことがあります。

 

[図表4]認知症に対応した主な介護保険の在宅サービス

 

●小規模多機能型居宅介護を検討する

 

小規模多機能型居宅介護には「通い」「泊まり」「訪問」の3機能があり、「通い」は通常のデイサービス、「泊まり」は宿泊の機能です。家族の都合や負担軽減などで、本人の心身の状態を考慮し、1日~数日の宿泊ができます。「訪問」は、利用者が1人暮らしなどの場合に、生活支援の目的で定期的に住まいを訪問する訪問介護の機能を果たしています。

 

認知症の夫に週1回か2回、認知症デイサービスを短時間でも利用してもらい、妻が少しでも介護から解放される時間を作ります。または「通い」を利用し、本人が不穏な状態にならなければ、施設で数日宿泊することもできます。

 

そうした慣らし運転的な試みを繰り返しつつ、本人の状態を見極めながら、数ヵ月から半年後にグループホームに入居するという段階的な進め方が望ましいと考えられます。

 

 

福岡 浩

介護業務運営・業務改善コンサルタント

元介護サービス情報の公表制度主任調査員

 

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